国内

震災発生直前 FM電波が遠くに届く異常現象が発生していた

「4年以内に70%」(東京大学地震研究所)、「5年以内に28%」(京都大学防災研究所)。マグニチュード7以上の巨大な首都直下型地震の発生確率が、いずれも権威ある研究機関からあいついで発表され、人々を震撼させている。

 東京大学地震研究所はその後、確率は50%以下に落ちるとしたが、いずれにしても、「いつ巨大地震が起きてもおかしくない」という日々を、これから過ごしていくことになる。「数年以内」というあいまいな予測期間が、人々の恐怖を増幅しているとはいえないだろうか。

 研究者の中には、「その日」がいつかをいち早く知るために、独自の方法で“地震予知”に取り組んでいる人たちがいる。そのなかのひとり、北海道大学大学院理学研究院教授の茂木透さんは、放送局の電波に着目している。

 茂木さんらが行っているのは、地震に伴う電磁気現象の研究だ。難しそうな名前だが、そのうちのひとつの課題として、VHF帯(ラジオでいうところのFM放送で使われている電波)で、地震に関連する兆候が表れないかを観測をしているのだ。1995年の阪神・淡路大震災のときに、地震の前に普段は聞こえない遠方のFM放送の電波に“異常”が表れたという串田嘉男さん(八ヶ岳南麓天文台長)の先駆的研究をもとに、森谷武男さん(北海道大学大学院理学研究院研究員)とともに2003年ころから日高地域や道東地域で観測を行っている。

 FM放送の電波は、普段は宇宙に突き抜けていくので、地表に沿って直接届く範囲でしか聞こえない。しかし、地震の前に大気中で電波を散乱させる現象が起きると、遠くでも聞こえるという仮説に基づいている。日高山脈の下で起こったマグニチュード4~6の地震約40例について地震の前に電波異常が観測されている。

 3.11の大地震に関連があったかもしれないと茂木さんらが考えているのは、89.9メガヘルツのFM放送だ。

「この周波数は中標津(北海道根室管内)にあるFM放送局からの電波で、普段はえりも町(北海道日高管内)にある北海道大学の観測所では受信されません。ところが、この電波に、2010年6月末から急に異常な変動が表れ、12月ころから異常の回数が減って2011年の2月末にはほとんどなくなりました。

 その後、あの3.11の大震災が起こったのです。調べてみると、同じ周波数の放送局が岩手県北部にもあることがわかりました。その周辺で地震に関連して電波を散乱させる現象が起こり、この周波数の電波が普段は届かない遠くまで伝播したと考えることもできます」(茂木さん)

 えりも観測所では、震災後の4月から再び89.9メガヘルツの電波に異常が表れ、現在でも続いている。

「しかし、いま観測されている異常は、どこに由来する電波かわからず、3.11以降新たに設置した周辺の観測点では同様の異常が観測されていないので、地震に関連ある現象かどうかは検討中です」(茂木さん)

「電磁気現象」の正体がわからないとはいえ、阪神・淡路、東日本、ふたつの大地震でともに見られた現象を無視することはできない。

※女性セブン2012年2月23日号

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン