スポーツ

斎藤佑樹 21勝は「ムリ」だが15勝「ぐらい…だったら…」

 ひたすらバットと白球に向き合うプロ野球キャンプ――己を高め、ライバルを蹴落とす真剣勝負の場だからこそ、練習の合間に洩れる選手の一言一言は切実である。“流しのブルペンキャッチャー”として知られるスポーツジャーナリストの安倍昌彦氏は、そんなつぶやきを聞き逃さなかった。以下、安倍氏のレポートだ。

 * * *
 2月23日。ヤクルトとの練習試合に投げた斎藤佑樹はまさしく「斎藤佑樹」だった。ベストメンバーで臨んだヤクルトに、終始自分のペースで投げ進めていった斎藤。4番・畠山を1つ前の速球と同じ軌道からすべらせたスライダーで内野フライに。

 昨季ホームラン王のバレンティンは、目から一番遠くにカーブを落とし、一転、足元にツーシームを沈めて三振にきってとる。ヤクルト打線は、誰も自分のタイミングで、自分のスイングをさせてもらえない。

 突然、快音が響いて、打球が左中間へ伸びた。2年目の山田哲人への2球目のスライダーが高く入った。このへんが「神の子」。乗ってきたところでそそっかしさが顔を出す「幼さ」。「神」への道の伸びしろだ。

 徹底的に、両サイド。しつこく、しつこく、低め、低め。4イニング、75球投げて35球が「ボール」だったのは、そんなテーマの副産物だ。大切なものが見えてきた者のすがすがしい表情。いつもの目と透明感が違った。

〈ダルビッシュ+(プラス)3勝ぐらい、いけるんじゃないの〉(※編集部注/ダルビッシュの2011年度成績は18勝6敗)

 本気の予感をぶつけてみたら、

「それって…20勝超えちゃうじゃないですか! とっても、ムリっす!」

 明るく笑い飛ばした斎藤佑樹。

 そして、「7秒」持ったぐらいの間があってから、

「ダルビッシュ-(マイナス)3勝ぐらい…だったら…」

 こっちの背中に小さくつぶやいた。

※週刊ポスト2012年3月23日号

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン