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中国がチベット、ウイグルで電気棒を口や肛門などに入れ拷問

 最近では、カルトや霊能者の“専売特許”のようになった洗脳、マインドコントロール。いずれも特定の主義や思想を持つように仕向ける方法であるが、より歴史の古い洗脳は物理的暴力や精神的圧迫を伴う。これらの危険な技術は、元をたどれば、中国で開発されたものであり、圧政の歴史とともに広まっていった。ジャーナリストの山村明義氏が解説する。

 * * *
 中国では支那事変(日中戦争)の最中から、日本人捕虜に対する洗脳工作を行なっていたが、戦後も強制的な洗脳工作が継続されていた。周辺国への侵略とともに、新たに支配下に置いたチベットやウイグルなどの土地で、中国政府に反抗的なチベット人やウイグル人などの洗脳が行なわれるようになったのだ。

 彼らを逮捕監禁し、中国当局が拷問や自殺の強要を行なうなどした。電気棒(棒状のスタンガン)を口や肛門、膣などに突っ込み、拷問を行なったことは有名だ。

 チベットから日本へ帰化したペマ・ギャルポ桐蔭横浜大学教授は、チベット人への洗脳工作の実態をこう語る。

「中国のチベット侵略の始まった1949年から1979年までに、チベット人120万人が死亡し、刑務所や強制労働所での死亡が17万人以上、拷問や自殺による死亡が約3万人に及ぶとされています。改宗など非仏教化も行なわれ、中国共産党はチベット僧侶への洗脳を行なっています。チベット仏教の最高権威であるダライ・ラマ法王への批判もやらせているのです」

 ペマ氏によれば、位の高いチベット僧侶を洗脳するために拷問し、「本当に神や仏がいるのなら、崖から飛んでみろ」と命令し、飛ばずに改宗する僧には、自由を与えるということも行なった。さらに、ウソも100回言えば真実になる、の喩え通り、「チベット侵略はなかった」とか、「これは他民族支配ではなく、中国国内の人権問題だ」と欺瞞を国内外に向けて繰り返し、先進国やチベット人に刷り込むことも行なっている。

 チベット侵略では他にも、密告制度や人民裁判に似た「タムズィン」という制度での洗脳工作が行なわれた。

 この密告制度や人民裁判は、文化大革命(1966~1976年)でも多用された。中国共産党の階級史観の下での人民裁判は、政敵を自己批判に追い込み、大勢の前で恥をさらすことで、「自分が間違っていた」と認めさせる、いわゆる吊し上げである。衆人環視の中、標的となった人物に「反革命分子」と書かれたカードを首からさげさせ、罵詈雑言を浴びせたり、頭髪を剃ったりする場面を記憶されている方も多いかもしれない。

 文化大革命はそれ自体が誤りであったことを中国共産党自身が認めざるを得なかったが、長らく継続してきた洗脳についても、最近はその方針を転換しつつある。結局、洗脳を続けてきたチベットで、僧侶が中国当局へ抗議の意志を示すため、焼身自殺に走るという悲惨な事件が頻発し、時間が経つとその効果が見られないことが主な理由だ。

 現在では強圧的な洗脳よりも、幼少期からの刷り込みや第三者からの教育などを通じた、ソフトなマインドコントロール方法に移行しつつある。

「中国共産党も最近では柔らかい洗脳方法に変え始めている。日本人も、中国が甘い言葉を言うときほど、その裏の思惑に気をつけなければなりません」(ペマ・ギャルポ氏)

 日本への震災復興支援を名目にした「パンダ外交」に、諸手を挙げて喜んでいては、中国共産党の思うつぼなのだ。

※SAPIO2012年4月25日号

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