芸能

「平清盛」視聴率低迷で心痛める松ケンに「落ち込むな」の声出る

 大河ドラマ「平清盛」主役の松山ケンイチは、独特の芝居勘を持っている。たとえば映画『デスノート』の「L」。あるいは、映画『ノルウェイの森』の主人公。180度、まったく違うキャラクターを、説得力をもって演じられる松ケンが輝かない大河ドラマだとすれば、問題はどこにあるのか。以下は、作家で五感生活研究所の山下柚実氏の視点である。

 * * *
  4月22日のNHK大河ドラマ「平清盛」の視聴率が、関東地区で今季ワーストタイの11.3%(関西地区は12.0%)を記録したそうです。

 そういえば、朝日新聞でも「『平清盛』低迷の理由は? 視聴率歴代最低レベル」という見出しを打ち、大きな記事でとり上げていました。

「平安時代のほこりっぽさを表現しようと穀物の粉を空間にまいた」というNHKの演出に、兵庫県知事が「画面が汚い」と発言し話題になったこと等をあげ、「視聴者から同様の意見が寄せられている」と記事は書いています。

 それほど視聴率が「ひどい」となれば、退屈で見るのをやめていた大河を、あらためて見たくなるのがへそ曲がりの常。で、何度かチャンネルをあわせてみた……。

 なかなか最後まで見ることができない。冗漫で、展開が遅く、筋もごちゃごちゃしてわかりにくい。何度見ても、「ざんばら髪の松ケンが叫んでいる」印象ばかり。たしかにこれでは人気を集めるのは厳しいかも。

 何といっても、低視聴率に心を痛めているのは主役の松ケンらしい。落ち込んでいるという報道も見かける今日このごろ。でも。低視聴率の原因を松ケンに求めるのは、ちょっとお門違いではないでしょうか。この役者は独特の芝居勘を持っている。それは、他の作品をよく見ればわかる。

 たとえば映画『デスノート』。「L」という実に個性的なアンチヒーロー役になりきった。目の下に隈、甘いものを食べ続け、ガリガリに痩せた猫背の変人探偵という難しい人間像を、ストイックな演技力と細かい描写力とで、全身で演じ切りました。

  一方、映画『ノルウェイの森』では、恋愛を主題にした村上春樹ワールドの主人公として、心が揺れる繊細な青年になりきった。人が青春期に持つ、「とまどい」を、よくぞここまで演じた。あの透明感は松ケンにしか出せない、と思わせてくれたました。

 180度、まったく違うキャラクターを、説得力をもって演じる抜きん出た芝居センス、芝居勘。「カメレオン俳優」とも言われるように、多種多様な役柄に憑依して、自在に飛び込んでいけるしなやかさを持つ役者ではないでしょうか。

 その松ケンが輝かない大河ドラマだとすれば。脚本と演出に問題はないでしょうか。料理とは素材がいくら良くても、料理人の腕が味を決定してしまう。揺るがぬ真実です。

 もし、松ケンに一つ問題があったとすれば、それは今回の『平清盛』の出演を自らが希望して実現させたことかも。出演をねじこむ時は、「大河」ブランドだけでなく、原作、脚本、演出といった料理人の腕をよく吟味してからでないと。「カメレオン」の妙味も十分に発揮することができないのでは。

 まだ長い道のりが続く大河ドラマ。落ち込んでいる場合じゃない! なんとか平清盛に憑依してガンバレ。マツケンサンバならぬ、マツケン賛歌です。

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン