国内

櫻井よしこ氏 尖閣諸島を守る第一歩は丹羽駐中国大使の更迭

 中国が着々と獲得を進めようと動いているようにも見える尖閣諸島の購入や活用に向けて東京都が募集した寄付金が10億円を超えるなど、領土に対しての国民の関心は高まりつつある。一方で肝心の国の腰は重い。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は政府の対応に憤りを感じると語る。

 * * *
 中国は尖閣諸島の「領有」を目に見える形で示そうとし始めました。2011年には公船が領海に侵入し、今年になって、「定期的な巡回」だと言い出しました。また、国家海洋局の大型艦船が尖閣付近にたびたび姿を現わしているのが現在の状況です。

 加えて、明確に尖閣諸島を中国の「核心的利益」だと言い始めました。まず、5月13日、北京で行なわれた野田佳彦首相と温家宝首相の会談を受けて開かれた中国外務省の記者会見で、ウイグル問題と尖閣問題を温家宝首相が中国の「核心的利益」だと述べたと発表されました。それまでは中国共産党機関紙「人民日報」が尖閣諸島を中国の核心的利益として報じたことはありましたが、中国政府が「核心的利益」と呼んだのは初めてでした。

 その後の5月22日、今度は中国共産党の王家瑞対外連絡部長が江田五月元参院議長に北京で尖閣諸島を「核心的利益」だと述べています。中国政府が尖閣は必ず取るという強固な意志を見せつけているのです。それでも日本政府には、尖閣の守りを固めようという動きは見られません。

 尖閣諸島の所有者である栗原國起氏が、国に対して不信感を抱き、「この人なら」と石原慎太郎都知事と交渉をしているのもわかるような気がします。

 石原氏による購入計画が浮上した当初は、藤村修官房長官が「必要ならそういう(国有化の)発想で前に進めることもあり得る」といい、野田首相も「ありとあらゆる可能性」を口にしました。ところが、それ以来、「国有化」の議論は立ち消えになってしまいました。玄葉光一郎外相がブレーキをかけたと報じられました。

 とするなら、外務官僚が玄葉氏に、「国有化を言い出したら、また中国と軋轢が生じかねない」などと囁いたのではないでしょうか。

 こちらが頭を低くしていれば物事が収まると考えるのが外務省です。それではすべての物事が中国の思う通りに収まってしまいます。外務省は、中国共産党政権の「御用聞き」なのかと問わざるを得ないほど、日本の主張を展開してきませんでした。

 ひたすら中国の顔色を窺い、中国の意向に逆らわないように“気兼ね外交”を展開して現在に至ります。政府がこんな外務省の姿勢を重視するかぎり、日本の国益を守ることはできないと断言してよいでしょう。

 こうした外務省の「御用聞き外交」をより顕著な形で体現しているのが、丹羽宇一郎在中国日本大使です。丹羽氏は月刊誌『Voice』3月号でインタビューに応じていますが、「日中の衝突は身体を張って阻止する」と題された記事の内容はまさに中国の国益を代弁するかのようでした。

 丹羽氏は尖閣問題に関する質問に対し、故・周恩来元首相の「和すれば益、争えば害」という言葉を引き、こう嘯(うそぶ)きました。

〈中国とやるなら徹底的にやるべきだという人がいる。でもそれは、いったいどういう意味なのでしょうか。軍事衝突も辞さないということでしょうか〉

 この言葉に、私は憤りを感じました。「徹底的にやるべき」ということを、いきなり「軍事衝突」に結びつける短絡的な思考は、外交とはほど遠いものです。守るべきものを守り、交渉すべきことは交渉する。そして、相手が国際法を破るなどの行為をしてきた際には厳しく抗議し、国益を損なわないよう、戦略を持って対峙する――それが外交です。

「争えば害」と言いますが、そもそも「争い」を仕掛けてきているのは、常に中国です。日本の領土であることに争う余地もない尖閣諸島を「問題化」し、理不尽にも奪い取ろうとしているのは中国です。「和すれば益、争えば害」の言葉は中国に向けてこそ発するべきものです。丹羽氏はいったいどの国の大使なのでしょうか。尖閣諸島を守る第一歩は、まず丹羽氏を更迭することだと言わざるを得ません。

※SAPIO2012年6月27日号

トピックス

大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ハワイ別荘・泥沼訴訟を深堀り》大谷翔平が真美子さんと娘をめぐって“許せなかった一線”…原告の日本人女性は「(大谷サイドが)不法に妨害した」と主張
NEWSポストセブン
世界的な人気を誇るシンガー・d4vd(20)(Instagramより)
「行方不明の10代少女のバラバラ遺体が袋詰めに」世界的人気歌手・d4vdが所有する高級車のトランクに遺棄《お揃いのタトゥー「 Shhh…」で発覚した2人の共通点》
NEWSポストセブン
須藤被告(左)と野崎さん(右)
《紀州のドン・ファンの遺言書》元妻が「約6億5000万円ゲット」の可能性…「ゴム手袋をつけて初夜」法廷で主張されていた野崎さんとの“異様な関係性”
NEWSポストセブン
神田正輝の卒業までに中丸の復帰は間に合うのか(右・Instagramより)
《神田正輝の番組卒業から1年》中丸雄一、『旅サラダ』降板発表前に見せた“不義理”に現場スタッフがおぼえた違和感
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)の“過激バスツアー”に批判殺到 大学フェミニスト協会は「企画に参加し、支持する全員に反対」
NEWSポストセブン
ラーメン店の厨房は暑い(イメージ)
《「汗を落とすな」「清潔感がない」》猛暑で増えた「汗クレーム」 熱湯で麺を茹で上げるラーメン店やエアコンが使えないエアコン取り付け工事にも
NEWSポストセブン
主人公・のぶ(今井美桜)の幼馴染・小川うさ子役を演じた志田彩良(写真提供/NHK)
【『あんぱん』秘話インタビュー】のぶの親友うさ子を演じた志田彩良が明かすヒロインオーディション「落ちた悔しさから泣いたのは初めて」
週刊ポスト
寮内の暴力事案は裁判沙汰に
《いまだ続く広陵野球部の暴力問題》加害生徒が被害生徒の保護者を名誉毀損で訴えた背景 同校は「対岸の火事」のような反応
週刊ポスト
どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン