国内

志茂田景樹“オウムの再生”を予言「急成長する時期が来る」

”オウムの再生”を予言した志茂田景樹氏

 ツイッターで多くの若者からの相談に答え、その含蓄あるツイートが話題の直木賞作家・志茂田景樹氏(72才)。今年2月、宗教をテーマにした電子書籍を販売したが、そのあとがきでオウム真理教について触れている。その志茂田氏に、いま再び注目が集まるオウム問題をはじめ、続発する通り魔など社会を不安に陥れる事件について聞いた。

* * *
――菊地直子容疑者の逮捕と、高橋克也容疑者の逮捕をどう見ますか?
志茂田氏:菊地容疑者は、もっと潜伏できたんじゃないかなと思います。オウム裁判の一応の終着を見て、潜伏していたこの17年間、ずっと持っていた緊張感が緩んだんじゃないかなという気がしますね。最後は元信者でもなんでもない男と事実上の結婚生活をしているでしょう。もし逃げきろうと思ったら、そういう行動はしないと思いますよ。

 一方、高橋容疑者の場合は、緊張感をずっと持続していた気がする。監視カメラにも映らないようにと知恵を働かせて全ての行動が徹底していましたよね。ずっと逃げおおせようと思っていたのでしょうね。何が何でも逃げきろうという高橋のようなタイプは、いよいよ逃げきれなくなった場合、自分でケリをつける、つまり自殺するんじゃないかと私は見ていましたが…。

――著書『新折伏鬼の野望』のあとがきに、オウム裁判の決着により、オウムの再生が始まったと書いていますが、その真意は?
志茂田氏:新興宗教というのは、どうしても活動が先鋭的になるんですね。社会性がなくなって、強引に勧誘場所に連れていって折伏したり。要するに宗教ってのは“信じる信じない”の問題になってくるんで、理性と離れたところから出発してるんですよね。“信じるためにはこういうことしなきゃいけない”というようなものがどこの宗教でもあるので、そういった活動に猛烈なエネルギーを注ぐようになるんですね。

 本来、新興宗教っていうのは貧しいなかで生まれやすいんですよ。貧しさと病気を柱に、この宗教を信じれば豊かになり、病気も治りますよっていう布教の仕方をしていく宗教も多い。オウム真理教の場合は日本が豊かな時代に生まれましたが、ちょうど心の悩みを抱える人が増えていった時代背景もあって、物質的な貧しさは関係なく信者を増やしていった。心惹かれていった若者たちが多いと思うんですね。

 混乱期ではない豊かな社会のなかでは、新興宗教というのは非常に特異な教団に見えるわけですよ。周囲から活動を狭められているぶん、内部の“燃焼”が激しくなるので、その反動で、非常に極端なカルトへと向かっていってしまいやすい。オウム真理教は、その結果、地下鉄サリン事件という反社会的な行動を起こしてしまった。

 オウムは司直の手で“壊滅”させられましたけど、アレフや光の輪のように派生した教団は残っています。過去にも、大本という教団が弾圧されましたが、派生した教団はいまでも根強く残っているんです。オウムは壊滅させられても、そこから派生した教団はもっと利口になり、やや社会性を持ちながら、でも意外と強い布教のエネルギーをエンジンのように発揮しながら伸びていくはず。そして、教団が続いて行く限りは急成長する時期が来るんですね。それをぼくは“オウムの再生”じゃないのかと表現したわけです。

――大阪の心斎橋など、最近、通り魔事件が増えていることについては?
志茂田氏:最近だと、車を使って登校中の子供に飛び込んだりというのも、ぼくは車を使った一種の通り魔だと思うんですよね。ムシャクシャする気持ちを全然関係ない人を道連れにして晴らすとか、こうした事件を起こす人たちは、考えが短絡的で身勝手という特徴がありますよね。心斎橋の事件の犯人が「人を殺してしまえば死刑になると思った」と供述しているように、自殺する度胸も実行力もないわけです。

――今後、こうした事件は増えるのでしょうか?
志茂田氏:増えていくでしょう。ぼくはとくに高齢者による事件、トラブルは増えていくと見ています。70代の女が渋谷で通り魔事件を起こした例もありますが、いまの70、80代は体力があって、それだけ活動年齢が長くなっているといえます。昔の人のように70才、80才だから人生がもう終わった、お迎えを待つばかりだというような意識を持つ人もいまの高齢者には少なくなってますよね。もちろん寝たきりや病院通いの高齢者もいますけど、まだまだ活動年齢の最中にいる元気な高齢者も多い。ですから、割合としてトラブルはこれからも多くなっていくでしょうね。

【志茂田景樹(しもだ・かげき)】
1940年3月25日、静岡県出身。小説家。1980年に『黄色い牙』で直木賞を受賞。90年代には『笑っていいとも!』などのバラエティー番組にも出演し、タレントとしても活躍。1999年に「よい子に読み聞かせ隊」を結成し、読み聞かせ活動を中心に絵本・児童書作家としても活動している。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン