国内

6才未満の子供からの臓器移植 難しかった理由を医師解説

 6月19日、6才未満として初めて脳死判定を受けた男児から摘出された臓器の全移植が終了した。

 心臓は大阪大学医学部付属病院で10才未満の女児に、肝臓は東京の国立成育医療研究センターで10才未満の女児に、腎臓は富山県立中央病院で60代の女性に、また臓器以外にも左目の角膜は金沢大学付属病院で50代の男性に、そして最後に、右目の角膜が関東地方の病院の入院患者(性別不明)にそれぞれ移植された。

 事前のドナー登録が認められていないため、家族の判断に委ねられる15才未満の脳死臓器移植。これで2例目となるが、今回、家族の決断が大きな注目を集めたのは、6才未満の脳死判定が難しいとされていたからだった。

 現代医療を考える会代表の『やまぐちクリニック』院長で脳神経外科医の山口研一郎氏はいう。

「6才未満の子供というのは脳の回復力が強い。脳死と判定された子供でも、もう一度回復し意識を戻したり、1週間どころか5年も10年も心停止しない人もいるんです。それを死と認めてよいのかというのが問題なんです」

 しかしその一方で、幼児からの臓器提供を行わなければ救うことのできない命がある。幼い子供にとって大人の臓器はサイズが大きすぎるため、移植できないといったケースがあるからだ。

 日本臓器移植ネットワークによると、5月31日時点で、心臓、肺、肝臓、腎臓の移植を待つ15才未満の患者はのべ79人、10才未満ではのべ39人いる。2010年7月に臓器移植法が改正され、15才未満の脳死臓器移植が認められるまでは、海外で移植を受けなければ救えなかった命だ。

 国立循環器病研究センター名誉総長の北村惣一郎氏はいう。

「心臓など特定の臓器だけが悪くて死の危険にある子供は、以前は多額の寄付金を集めて外国に渡り、移植を受けなくては死んでしまうというような状況だった。しかも、2008年5月に国際移植学会が、“よその国へ行ってお金を払って移植をやってもらうというのは、臓器の売買ではないか”という理由から、海外に渡航して移植を受けることを原則禁止すると宣言しました。どうしても法律を改正する必要があったんです」

 また余談になるが、臓器移植法のガイドラインは虐待児からの移植は行わないものと定めている。移植によって虐待の事実が隠されてしまうことや、虐待した親が子供の最後を決定してよいのかという問題をはらんでいるからだ。さらに1例目のドナーが自殺者だったことが移植の後に明らかになったが、これについても制度が自殺を誘発することはないかとの議論があった。

※女性セブン2012年7月12日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン