フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!?TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏は、絵の才能がなくても「見る」「描く」で脳力は上がるという。以下は澤口氏の解説だ。
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脳科学的にみると「音楽の効用」は、世間でも数多く語られ、周知の事実です。しかし「絵画は?」というと、絵を見たり、描いたりすることの効用は、現在のところ理論だけで、実証的研究がかなり不足しているのです。
さて、脳には、論理数学(算数)や言語(国語や英語)、あるいは身体運動(体育)用の各種知能と、それに対応する各種脳内神経システムがあります。同様に、絵画にも、絵画的知能と絵画的神経システムがあります。
音楽でも絵画でも、芸術の分野に幼少期から非凡な才能を示す子供がいますが、そういった子供の脳は、以前解説した「特殊脳」か、あるいはそれに近いかで、将来的に優れた音楽家や画家になる可能性を秘めています。ですから、音楽や美術の授業は、才能や個性を発見し伸ばすという意味合いを持っているはずです。
では、絵画を「見る」ことはごく一般的な人々にとって、どういう意味を持つのでしょうか? 人間は、視覚がとても発達しているため、「見る」こと自体に実は深い意味があります。例えば、「美しいものを見ること」については、進化的にいうならまず、「美しい異性」を見ることを意味し、恋愛や結婚など、人生に大きく関係してきます。
さまざまな対象に「美」を感じるのが人間の特徴ですが、美しいものを見ると快感物質であるドーパミンが脳内で放出されるので、華やかな気分や、楽しい気分になり、ストレスの軽減や、元気が出たりします。
一方、「描く」ことはどうでしょうか?
実はごく最近になって、脳レベルでみると、楽器演奏と絵画を描くことはかなり似た脳内神経システムを使うことがわかってきました。すでに、ピアノ演奏によって、人間にとって最も重要な知能「一般知能」を伸ばすことが実証されています。実際、音楽的才能の高低にかかわらず、ピアノのレッスンで語彙が増えるなどのデータが存在します。 「音楽用神経システム」と「絵画用神経システム」は別物ですが、それぞれにつながる神経システム・神経回路には共通する部分がかなり多いのです。
となると、すでに実証されている、音楽による一般知能や問題解決能力の向上、語彙の増加などの効果が「絵画を描く」ことによってももたらされる可能性があります。
感動的な音楽を聞いたり、演奏したり、美しい絵画を見たり描いたりする。そうやって子供の目を芸術に向けさせることは、それだけ脳力の向上にも役立つのです。
※女性セブン2012年7月19日号