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愛甲猛 「ヤクザがプロ野球選手に近づく方法」を体験的に解説

 読売巨人軍・原辰徳監督一億円恐喝事件について、「野良犬野球評論家」愛甲猛氏が解説する。今回は「ヤクザとプロ野球選手」がテーマだ。(聞き手=ノンフィクションライター・神田憲行)

 * * *
--プロ野球選手が女性にモテるのはわかるんですが、暴力団とプロ野球選手の接点はどのように出来るのでしょうか。

愛甲:タニマチ経由というのは多いね。バブル時代に不動産屋さんがタニマチとして多かった。仲良くなってスポンサーになってもらい、酒席をともにするうちに、いずれはそういうヤクザたちが顔を出すようになるんですよ。全部がそうだとはいわないけれど。

 野球選手は野球しか知らないし、飲み食い遊びがセットで接待されるのが「当たり前」みたいな感覚だから、タニマチから声をかけられるとつい顔を出しちゃう。

 ただ自分もヤクザとか全く知らないとはいえない人間なんでわかるんですが、ヤクザのトップは「巨人・大鵬・卵焼き」で育ってきた人たちだから、ただ野球選手と飯食いたい、サインが欲しいという一心だけ。純粋なファンが多い(笑)。

--純粋なファンて(笑)。

愛甲:いやそうだよ。俺がプロ1年目のキャンプのとき、新人選手ばかり集められて警察の講習会があったんです。警察官が「この街にあるヤクザの組織は○○組、△△組で、組長が××という。で、この繁華街にあるこの店は○○組の息がかかっているから行かないように」とか懇切丁寧に教えてくれる。

 で、とある人から食事誘われて郊外の料亭みたいなところにいったら、講習会で名前が出た有名な親分さんと姐さんとお嬢さんが待ってた(笑)。小さいお嬢さんが甲子園で俺のファンになってくれて、「サインが欲しい」と言われたのでサインしました(笑)。
 
 そのあと俺のホテルの門限があるので姉さんが車で送ってくれたんですが、ばかでかいキャデラック運転してるのが丸坊主で武闘派丸出しみたいな人で生きた心地しなかったよ。高校時代には学校前で拉致されたこともあるよ(笑)。

--なんですかそれは(笑)。

愛甲:甲子園で優勝したあとの話だけど、車のおねえさんが学校の前で「家まで送ってあげるから」というんだ。怖いなと思ったけれど「いいや、家まで帰れるから」と思って乗ったら、スナック経営してるお姉さんで「うちの店においで」と連れて行かれたら、店に真っ白いスーツの人たちがいた(笑)。

 そこで「スーツの背中にサイン書いてくれ」といたわれたんだけれど、そんなとこ書けないじゃないですか。それで「背中にかけるほどの人間じゃないんで」と袖に書かせて貰って解放されました。そのあとも組長の誕生日に呼ばれたりした(笑)。まあでも、なんだかんだいってロッテに入ったときに有藤さんとか張本さんの方がヤクザより怖かったけど(笑)。

 ただ原さんの件は個人で脅しにいってて、組織の上の方はやらせてないと思う。「巨人・大鵬・卵焼き」の人たちだから、そんな「恐喝」みたいなことを事前に知ったらやめさせる。前にヤクザの女に手を出して慰謝料持ってある監督と選手が詫びに行ったら、逆に親分の方が恐縮したという話があるくらい。

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