ライフ

子供の頃の虐待経験が寿命を短くする デューク大研究で判明

 白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏が、子供の頃の虐待と寿命の関係について解説する。

 * * *
 小児期に受けた虐待によるストレスが大人になってからの病気の発症や死亡率、寿命に影響を及ぼすことが知られているが、その発症や寿命短縮についてのメカニズムはこれまであまり理解されていなかった。

 米国デューク大学心理神経科学部門のシャレブ博士らの研究チームは236人の小児に対して家庭内暴力、学校でのいじめ、身体的虐待の有無を調査し、5歳時と10歳時におけるテロメア(細胞の核の中にある、染色体の末端にある「繰り返し構造」――すり減ると細胞が老化する)の長さの関係を比較・検討した。

 このテロメアが長い人は寿命が長い傾向が認められることから、長寿の指標と考えられている。

 調査の対象になった小児は1994~1995年に英国で生まれた環境リスク調査研究のコホート(集団)メンバー2232人から抽出された男児120人、女児116人の計236人の児童。暴力を受けた経験は【1】家庭内暴力の有無、【2】学校でのいじめの有無、【3】身体的虐待の有無の3種類で評価された。

 5歳の時点で236人中128人(54%)が「暴力を受けた経験」が全くなく、69人(29%)が1種類の暴力、39人(17%)の児童が2種類以上の暴力を受けていた。

 興味深いことに1種類以上の暴力を受けた児童のテロメアは暴力を受けなかった児童に比べて5歳の時点で既にテロメアが短くなっていることが明らかとなった。さらに10歳時の検査では、2種類以上の暴力を受けた児童は、暴力を受けていない児童や受けた暴力が1種類であった児童に比べテロメアの短縮が明らかに加速したのである。

 子供の頃の精神的トラウマは一生引きずることが知られていたが、実際にその細胞が傷つき、老化している実態が明らかとなった。

※週刊ポスト2012年8月3日号

関連キーワード

トピックス

群馬県前橋市の小川晶前市長(共同通信社)
「再選させるぞ!させるぞ!させるぞ!させるぞ!」前橋市“ラブホ通い詰め”小川前市長が支援者集会に参加して涙の演説、参加者は「市長はバッチバチにやる気満々でしたよ」
NEWSポストセブン
ネットテレビ局「ABEMA」のアナウンサー・瀧山あかね(Instagramより)
〈よく見るとなにか見える…〉〈最高の丸み〉ABEMAアナ・瀧山あかねの”ぴったりニット”に絶賛の声 本人が明かす美ボディ秘訣は「2025年トレンド料理」
NEWSポストセブン
千葉大学看護学部創立50周年の式典に出席された愛子さま(2025年12月14日、撮影/JMPA)
《雅子さまの定番カラーをチョイス》愛子さま、“主役”に寄り添うネイビーとホワイトのバイカラーコーデで式典に出席 ブレードの装飾で立体感も
NEWSポストセブン
審査員として厳しく丁寧な講評をしていた粗品(THE W公式Xより)
《「脳みそが足りてへん」と酷評も》粗品、女性芸人たちへの辛口審査に賛否 臨床心理士が注目した番組冒頭での発言「女やから…」
NEWSポストセブン
12月9日に62歳のお誕生日を迎えられた雅子さま(時事通信フォト)
《メタリックに輝く雅子さま》62歳のお誕生日で見せたペールブルーの「圧巻の装い」、シルバーの輝きが示した“調和”への希い
NEWSポストセブン
宮崎あおい
《主演・大泉洋を食った?》『ちょっとだけエスパー』で13年ぶり民放連ドラ出演の宮崎あおい、芸歴36年目のキャリアと40歳国民的女優の“今” 
NEWSポストセブン
日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏
佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白
週刊ポスト
大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
会社の事務所内で女性を刺したとして中国籍のリュウ・カ容疑者が逮捕された(右・千葉県警察HPより)
《いすみ市・同僚女性を社内で刺殺》中国籍のリュウ・カ容疑者が起こしていた“近隣刃物トラブル”「ナイフを手に私を見下ろして…」「窓のアルミシート、不気味だよね」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情