国内

ぎんさんの94才娘 オレオレ詐欺男に「まともな仕事しろ!」

 視力が落ちてきた、耳が遠くなった、根気が続かなくなった。こうした肉体の衰えとともに、年をとってから心配になるのが、ボケや頭脳の衰えであろう。だが平均年齢93歳の「蟹江ぎんさん」の4姉妹は、3日おきに実家の蟹江家に集まり、“縁側談議”に花を咲かせて、互いに刺激し合っている。これがいちばんの“脳トレ”になるという。

 そんな日ごろからのトレーニングが存分に発揮される出来事が、三女・千多代さん(94才)の身に起きた。

 今年3月も終わりのこと。夕暮れ近く、そろそろ夕食の支度をと思っていたところ、茶の間にある電話が鳴った。  「バァちゃん、オレだよ、オレ、オレ……」

 受話器を取ると、いきなりそんな声が聞こえてきた。千多代さんはすぐに振り込め詐欺の電話だと気づいた。このときの千多代さんの対応ぶりを再現すると――

若い男:「もしもし、オレオレ、ねぇ、バァちゃん」

千多代さん:「えっ、なんだって、もう一ぺん、いってみやあ」

若い男:「だっから、オレオレ」

千多代さん:「あのな、わしのうちにはにゃあ、“オレ”っていう人はおらんよ。あんた、何をいうとるの。あんた、名前があるだろが」

若い男:「…………」

千多代さん:「わしには孫があるけども、“オレ”というふうに育てた覚えはないよ。あんたよ、そういうことやっとるけども、声が若いなぁ。ねぇ、いくつなの?」

若い男:「う、うーん……」

千多代さん:「あんた、誰にいわれてこういうことやっとるの。ほら、後ろに誰かおるだろ!? それを出さんかぁ!」

 すると受話器の向こうで何やらいい合う声がして、別の男が出た。その男は“弁護士”だと名乗った。

千多代さん:「まあまあ、黄色いくちばしをして、そんな坊やみたいな声出して…。そんな若い弁護士、聞いたことないにゃあ」

弁護士を名乗る男:「そ、そんなこといわれても……」

千多代さん:「あんたな、人をちょーらきゃして(騙して)、金を取ろうなんて大きな間違いだよ。そういうこと、やめてな、まともな仕事をしろ! こりゃ、黙っとらんと、何とかいやぁーせんかい?」

その男:「……」

千多代さん:「おい、これからもやるのか、やめるんか、さあ、どっちを取るきゃあ!!」

その男:「……ハイ、もうやめることにします」

 息子や孫、警察官を装って、高齢者にウソの電話をかけ、多額の現金を振り込ませる詐欺の被害が、再び増加の傾向にある。警察庁によると、2011年に確認された振り込め詐欺は4628件、被害総額は106億円で、2年連続で増加傾向だという。

五女・美根代さん(89才):「テレビや新聞でこれだけ注意を呼びかけとるのに引っかかるのは、大金を持ってる年寄りが多いということだがね。それにしても、オレオレ詐欺に懇々と説教した千多代姉はあっ晴れだよ」

 千多代さんが胸を張っていう。

「振り込め詐欺もな、頭をしっかり動かすための脳トレになるがね」

 そんな4姉妹に、こんな話が舞い込んだ。振り込め詐欺の撲滅を喚起する愛知県が、その“キャンペーンガールズ”に、姉妹たちを抜擢したのだ。

四女・百合子さん(91才):「いや、ガールズじゃなくて、“ババァーズ”だがね、ハハハハ」

※女性セブン2012年8月2日号

関連キーワード

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン