国内

老人の筋トレ代まで払わされる若者 怒りの一票を投じよとの声

 野田佳彦首相は消費税増税について、記者会見でこう語った。「未来を搾取するというやり方はもはや通用しない。今回は給付、負担、両方合わせて世代間の公平を図るという理念のもとで法案をまとめさせていただきました」。しかし、現実の政策は明らかに「若者軽視」だ。政治家たちが票のために「老人重視」する現状をジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
「世代間の公平」と「子孫にツケを残さない」というのが、野田首相の増税を正当化するマジックワードだった。しかし、増税による税収が「高齢世代」と「子育て世代」にどう配分されるかを見るとそれがウソだとわかる。

 消費税増税によって得られる13.5兆円のうち、社会保障に回るのは2.7兆円(残りの大部分は国債発行を減らすための財源)。そのうち「子育て支援」は7000億円だが、施設整備などを除くと、待機児童対策の3000億円と放課後児童クラブ拡充の1000億円を合わせて4000億円だけ。

 しかも、民自公3党は「震災復興に回す」という理由で「子ども手当」を廃止し、それによって子育て支援の予算は約5000億円削減されたから、差し引きでは増税しても支援は薄くなる。

 もっと若い「子育て前」の世代はそもそも一体改革の対象外。それなのに、現在は40歳以上が負担している介護保険料(月額平均約5000円)を20歳から徴収することが検討されるなど、負担対象にはしっかり入っている。

 介護保険制度では「介護予防」の名目で元気なお年寄りをバスで施設に送迎して筋力トレーニングまで行なっているが、年金に加えて筋トレ費用まで請求される若者は、もはや高齢者の奴隷か、それが言いすぎなら政治家にカツアゲされるいじめられっ子だろう。

 一方の高齢者世代には、低所得者への年金増額をはじめ、年金・医療・介護の3分野で約2兆円が使われる。「世代間の公平」とは逆行する改革であることがわかる。

 公務員定数削減でも、担当の岡田克也・副総理は「新規採用4割削減」で若い世代の就職の機会を奪う一方で、逆に給料が高い中高年公務員には定年後の再任用(再雇用)を増やす方針を打ち出している。ここでも「高齢者重視」の発想だ。

 民主党厚生労働部門の幹部が本音を打ち明ける。「いまや60歳以上が有権者の4割近くを占めている。若い世代は人口が少ない上に投票に行かないから、投票率を考えると、実質的に60歳以上は有権者の半数近く。お年寄りを怒らせると選挙で勝てない」

※SAPIO2012年9月19日号

関連キーワード

トピックス

お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト
主張が食い違う折田楓社長と斎藤元彦知事(時事通信フォト)
【斎藤元彦知事の「公選法違反」疑惑】「merchu」折田楓社長がガサ入れ後もひっそり続けていた“仕事” 広島市の担当者「『仕事できるのかな』と気になっていましたが」
NEWSポストセブン
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志(61)と浜田雅功(61)
ダウンタウン・浜田雅功「復活の舞台」で松本人志が「サプライズ登場」する可能性 「30年前の紅白歌合戦が思い出される」との声も
週刊ポスト