国際情報

米 最近の日韓関係に「韓国何してる」との思い強いと外交筋

 韓国は今年に入って竹島について日本を挑発し、やりたい放題を続けてきた。その韓国にアメリカはいま、「一体何をやっているのか」と厳しい目を向けているという。以下、産気新聞ソウル駐在特別記者、黒田勝弘氏の解説だ。

 * * *
 韓国の「国防白書」は2年おきに発行される。2008年版では表紙にカラー写真で竹島周辺を遊弋(ゆうよく)する大型強襲揚陸艦「独島(ドクト)」の勇姿(?)が登場した。本文でも海軍艦隊による「独島防護訓練」の様子と、島上空を哨戒飛行する空軍のF16編隊の姿が紹介されている。

 まるで韓国軍の“仮想敵”は日本であるかのような雰囲気だった。典型的な大衆迎合のポピュリズムだ。「こんなに日本の方ばかり向いていて大丈夫かしら?」と心配だったが、案の定、2010年の3月と11月、北朝鮮の軍事挑発を受けひどい目に遭った。

 いずれもソウル北西の海の南北境界線付近だったが、白ニョン島(ペニョンド)沖で夜間パトロール中の哨戒艦が北の魚雷攻撃で撃沈され、さらに延坪島には白昼、ロケット砲と長距離砲が撃ち込まれ町が炎上している。

「それみたことか!」「韓国安保はいったいどこを向いていたのか?」と、韓国軍は内外から厳しい批判にさらされた。迂遠な「独島防護」に血道をあげる一方で、北からの奇襲攻撃にはまともに対抗もできない体たらくだったからだ。

 その結果か、2010年版の「国防白書」の表紙から「独島」は消えた。「主敵(韓国軍では仮想敵をそういっている)は日本などでなくやはり北朝鮮」――しこたま北朝鮮にやられてみて、韓国軍も正気を取り戻したかにみえた。

 これまでの慣例だとこの年末に2012年版が出る予定だが、さてどうなるか。どうも雲行きが怪しい。またぞろ「独島」が大きく登場しそうだ。李明博大統領の「史上初の独島訪問」とそれに対する日本の反発・対抗措置で、反日世論に「独島死守ムード」が高まっているからだ。

 韓国は1950年代初めから竹島占拠を続け、これまであらゆることをやってきた。何もなかった岩山の島に武装警備隊(警察)駐屯からヘリポート、砲台、レーダーサイト、埠頭など各種施設の建設、メディアや閣僚をはじめ要人の往来、各種イベントの開催……。

 今年は8月までにすでに14万人以上もの韓国国民が島を訪れている。これでもか、これでもかのやりたい放題を続けてきた。領土紛争ではいわば“挑発”の限りを尽くしてきた。あと残るは大統領上陸と軍隊(海兵隊)の派遣だけといわれてきた。今回、その一つの大統領上陸をやってしまったわけだが、実はもう一つの“海兵隊派遣”もついでにやろうとした。

 これまで定期的にやってきた「独島防護訓練」が9月7日に実施されたが、当初、軍は海兵隊上陸作戦演習を敢行しようとした。大型ヘリ2機で1個中隊、約100人を空から投入、仮想侵入者を制圧するという訓練だった。

 ところが直前になって大統領官邸の政治判断で海兵隊上陸演習だけは中止となった。大統領の竹島上陸以降、日本側での予想外の激高ぶりに驚き、これ以上の刺激は控えたというわけだ。

 韓国をためらわせた背景には、米国の“たしなめ”があったというのがソウル外交筋のもっぱらの観測だ。米韓連合軍体制で有事の作戦統制権を握っている米国は、軍事問題では韓国にモノいえる立場にある。

 米国には最近の日韓関係について「韓国はいったい何をやっているんだ! どこを向いているんだ!」との思いが強いという(ソウルの外交筋)。権力移行期ですべてが不透明な北朝鮮、軍事的膨張を続ける中国……米国にとって李明博大統領の“独島・愛国パフォーマンス”など、不要不急のまったく余計な行動というわけだ。

 哨戒艦撃沈・延坪島砲撃から2年。“懲りない韓国”がまたまた「独島・反日」で視野狭窄に陥っている。となると今度も北朝鮮に軍事挑発してもらうしかないか。

※SAPIO2012年10月3・10日号

関連キーワード

トピックス

芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン