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遺言は何回書いても大丈夫 最新日付のものが自動的に有効に

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「遺言に矛盾と訂正があり、書き直したい。どうすればよいか」と以下のような質問が寄せられた。

【質問】
 伯父には子どもがいなかったので、遺産のすべてを妻に贈るという遺言を書きました。しかしその後、伯父夫婦に子どもが生まれました。先に書いた遺言は残されており、すべて妻に贈るという遺言もそのまま残されていますが、遺言の訂正はどのようにすればよいでしょうか。アドバイスをください。

【回答】
 遺言の訂正とは、すでにある自筆遺言の文言を削除、加筆したりすることをいい、その場合には、訂正個所を指摘して日付を入れ変更したことを書き、そこに署名押印するなどの一定の方式が必要です。

 しかしご質問は、子どもが生まれたことで事情が変わり、すべて妻に残すという遺言の内容を変更したいということだと思います。その場合、遺言の訂正ではなく、変更した内容の遺言書を新たに作成します。その方式は、通常の遺言をするのと同じです。実は遺言書は何通作ってもよいのです。

 民法第1023条では、「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と定め、このほかにも複数の遺言書があり得ることを当然の前提としています。

 複数の遺言内容に矛盾があるときは、一番後の遺言が有効になります。遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、いずれも作成日が明記されます。この日付を比較して優劣を決めます。変更の遺言書を作る上で大切なことは、まず通常の遺言の方式を守るということです。すなわち、自筆証書遺言であれば、全文自筆で、日付や氏名を自署する必要があり、もし誤字訂正があれば前記の訂正手続きもします。

 公正証書遺言であれば、公証人が遺言を作成するので、書き方の制約はありませんが、相続人や受遺者など一定の人以外の証人2名が必要です。その他、すでに書いた遺言と矛盾する遺言にする場合は、死後の誤解を避けるため、変更する後の遺言書に、前にした遺言を日付等で特定した上で、これを撤回すると明確にしましょう。民法第1022条には、遺言者はいつでも、「その遺言の全部又は一部を撤回することができる」としています。

※週刊ポスト2012年10月5日号

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