スポーツ

中日・谷繁をして「やっぱ天才」と言わしめたイチローの逸話

 プロ野球の審判員といえば、選手たちのプレーを一番近くで見られる人物。中でも“超一流”と呼ばれる選手には、やはり実績相応のエピソードがあるようだ。元セ・リーグ審判の篠宮愼一氏は、印象深い選手として落合博満とイチローの名を挙げる。初めて球審をした時、中日時代の落合博満にこんな言葉をかけられた。

「アウトコースいっぱいの球をストライクとコールしたら、“ボール半分外れてるよ”といって退いた。自信たっぷりの判定を大打者に否定されたので、ずっと忘れられなかったんです。

 後日、落合選手が巨人に移籍した後のヤクルト戦で、アウトコースに外れたボールに落合選手が手を出してファウルした時、“(コース)いっぱいか?”と聞いてきた。本当は説明は禁じられているのですが、前の言葉があったせいでつい“明らかに外れています”と答えた。彼は“そうか……”と呟いて次の球を引っかけて内野ゴロ。すると古田(敦也)捕手が、“落合さん、そろそろ潮時かもね”といってきた。その後日本ハムに移籍しましたが、成績は低迷し、引退しました」

 イチローとは横浜とのオープン戦で。篠宮球審は1球目、インコースのボールを誤ってストライクとコールしてしまった。

「やばいと思っていると、イチローが“今のはいっぱいですか”と聞いてきた。仕方なく、そうだと答えると、聞き逃さなかった谷繁(元信)捕手がまったく同じコースを要求した。うわ、見逃されたらどうしようと思った瞬間、イチローはその球をツーベースにしたんです。審判に合わせてストライクゾーンをアジャストしてしまう。谷繁捕手が“イチローはやっぱ天才だ”といったのが印象的でした」

※週刊ポスト2012年11月2日号

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