国内

台湾の元総統・李登輝氏 日本の若者はダメではないと断言

 中国や韓国に翻弄され続けた2012年に日本。ではどう政治や経済を立て直すべきなのか。中国に毅然と向き合い、台湾の独立と民主化を守り続けた元総統の李登輝氏が日本に提言する。

 * * *
 今は歴史の転換期にある。“無極化”した国際社会で一番大事なことは、中国や米国について考える前に、「日本はどうすべきか」について自ら考え、実行することだ。米中冷戦に向かう今が、むしろ日本にとっては真の自主独立を勝ち取る絶好のチャンスだと私は考えている。

 米中冷戦時代に米国が誰を頼りにするかと言えば、日本以外にない。その立場を利用して米国と交渉すれば、これまでの不平等な諸問題、たとえば、日米地位協定の改正や米軍基地問題などの解決につなげることができるだろう。

 憲法改正も必要だ。自衛隊を縛る制約を解き、アジアの安全保障に日本が責任を果たすことで、米国と対等な立場に立つことができる。従来の対米依存を基調とする日米安保ではなく、戦前の日英同盟のような、相互に責任を持つ同盟関係を米国と築くことが可能になる。

 そこへ向かうには日本における直近の課題、すなわち政治改革と経済の復活を実現しなければならない。解決法はある。私は2009年に日本で講演をした時に、坂本龍馬の「船中八策」になぞらえて8つの提案をした。一部を改めて紹介したい。

 第一に、首相公選制を導入すること。政局に左右されず首相がリーダーシップを発揮できるようにする。第二は、官僚中心の中央集権体制を打破し、地方分権を促進すること。地域主権型道州制を導入し、中央政府は連邦政府として設置する。第三に、米国式教育を改め、日本人独自の精神性や美意識を高める教育を実現すること、などである。

 経済分野においては、日本銀行の改革が必要だ。グローバル金融の時代、中央銀行の政策は極めて重要な意味をもつ。金融緩和でも投資でも、日銀は経済成長の促進に積極的に関与していくべきである。今の日銀は中立的な立場を守ることに囚われすぎている。誰のための中央銀行なのかということだ。

 そして、日本の政治・経済を改革し得るのは、坂本龍馬のような志を持った若者である。「日本の若者は駄目だ」と言う人も多いが、私はそうは思わない。かつて私を訪ねた学生が、東日本大震災の後に送ってくれた手紙にはこう綴られている。

「私もボランティア活動などに参加し、少しでも被災地のお役にたてればと考えております。(中略)10年も経てば、私たちがこの社会を支えていかなければならないことを考えると、当事者意識と覚悟、そして、意思を持って大学で勉強に励み、真剣にこの国の未来について考えていかなければならないと感じます」

「私心」を捨て去り、「公」に尽くすそうした生き方こそ私が心酔する大和魂の発露であり、武士道の本懐である。手紙の若者にも、日本精神が脈々と息づいている。

 何も恐れることはない。中国の覇権主義に歯止めをかけるのは日本だと私は考えている。武者小路実篤は「君は君、我は我なり。されど仲よき」という言葉を残した。日本は中国に依存したり媚びたりすることなく、経済など必要な分野だけドライにつきあえばいい。そのためにも、自由・民主の価値観を共有する台湾との経済・文化交流を促進し、日台関係を再構築して、協調して中国と対峙するべきだ。

※SAPIO2013年1月号

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン