国内

待機児童ゼロ実現の横浜市長 職員に「困る市民の声を聞け」

 保育所に通いたくても通えない「待機児童」は、全国で深刻な問題となっている。そんな中、横浜市はわずか3年間で市長・林文子さん(66才)を中心に「待機児童ゼロ」実現が見えてきた。林さんは、高校卒業後、結婚してから転職した先のホンダでトップセールスを続け、その後BMW東京社長などを歴任した“伝説のセールスウーマン”だ。

 横浜市緊急保育対策室の伊東裕子課長が忘れられないのは、林さんが市長に就任してから8か月後の会議だった。2010年4月の待機児童数が前年を上回り、恐らく、横浜市が2年連続で全国ワースト1位になるだろうと報告したときのこと。緊急保育対策プロジェクトが本格化する前の数字だから仕方がない…メンバーのみんながそう思っていたときだった。

 だが、林さんは違う視点で見ていた。

林:「確かに、結果については仕方がないことです。でも、今回、保育所に入れなかった1552人のかたは、今どうしていらっしゃるか把握しているの?」

伊東:「相手のほうから連絡をいただかない限り、特別こちらからは…」

林:「どうしてフォローしていないの?」

伊東:「しかし、入れなくて困っているかたに連絡をしても、逆に怒らせてしまうかと…」

林:「セールスの世界では、迷惑をかけてしまった相手に対してアフターケアするのは当然のことです。市民のみなさんがどれだけ困っているか、一人ひとりに会ってきちんと調べなさい!」

 それは従来の市役所の仕事のなかでは、考えたこともなかったことだったと、伊東さんは言う。

「目が覚めたような気持ちでした。それまで待機児童対策というのは保育所をつくることで解消していく、というような考え方でした。でも、本当に必要なのは、みなさんがどんなことに困っているかを知ること。実際に、保育所にはいれなかったかたに話を聞くことで、その後にきめ細かい保育サービスの提供ができるようになったんです」(伊東さん)

 前例にとらわれず、おかしいと思ったことはおかしいと声を上げる――林さんが民間出身の市長として新風を送り込んだ瞬間だった。

※女性セブン2013年3月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン