国際情報

北朝鮮労働者が韓国製のパイ持ち帰ると報じ喜ぶ韓国メディア

 北朝鮮が金正恩政権となって1年。長距離ミサイルを発射するのは確実とみられているなか、最前線にあるはずの韓国の様子を、産経新聞ソウル駐在特別記者の黒田勝弘氏がリポートする。

 * * *
 金正恩政権の軍事優先政策を牽制するには、中国が戦略物資である石油の対北輸出をストップするのが一番効果がある。しかしそのカードは依然、「抜かずの宝刀」のままだ。

 対北制裁でいまいち効果が上がらない背景には、中国のシリ抜けのほかもう1つ、韓国の脳天気ぶりがある。南北共同で操業している開城工業団地のことだ。韓国は対北政策での主導権確保を官民挙げて叫んでいながら、開城工業団地には手を触れようとしない。これは卑怯(?)というものだ。

 開城工業団地はソウルの北方約70キロの北朝鮮領に2004年、韓国の経済協力事業として開設された。2012年末現在、韓国企業123社が北朝鮮労働者5万3450人を使って操業中だ。原材料や電力は韓国から送られ、北朝鮮労働者の出退勤用バス280台も韓国が提供している。

 主に中小企業による雑貨生産で昨年の生産高は5億7000万ドル。生産高累計は約20億ドル。北朝鮮には賃金と社会保険料として年間約9000万ドル(労働者の月給は約130ドル)の外貨が流入している。金正恩政権にとっては貴重な外貨収入だ。

 韓国は開城工業団地を北朝鮮社会に“南の風”を吹き込む窓口と位置付けている。北朝鮮を開放、改革に導くためのショーウインドウというわけだ。

 工業団地の職場でおやつとして提供される韓国自慢のチョコパイを、北朝鮮労働者たちが食べずに持ち帰ることを韓国メディアは嬉々として伝えているが、事態はそう甘くない。

 北朝鮮当局はむしろ韓国に対し、ことあるごとに「工業団地への韓国側要員(約800人)の出入り制限」を脅迫カードに使ってきた。むしろ韓国は足元を見られてきたのだ。

 この際、韓国政府は対北制裁の独自策として「開城工業団地の操業中断・閉鎖!」を宣言してはどうか。被害を受ける韓国企業には政府が補償すればすむ。身を削る覚悟があってこそ北朝鮮との“戦い”に勝てる。

 脅迫されてばかりではなく、たまには北朝鮮を脅迫するそれが念願の対北政策での主導権確保への第一歩である。

※SAPIO2013年5月号

関連キーワード

トピックス

真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン