スポーツ

競馬史に残る落馬事故1967年阪神大賞典 YouTubeに動画あり

“平地”のレースでさえ危険を伴う競馬。それが障害レースともなれば、なおさらのことだ。作家の山藤章一郎氏が、競馬の障害レースの現場に迫った。

 * * *
 転倒、落馬では、競馬史に残る熱い逸話がある。1967年の阪神大賞典、ダービー馬〈キーストン〉は、その日も2馬身リードの強さを見せ、最後の直線を行った。だが突如、左前肢を崩れさせ、騎手・山本正司は振り落とされた。馬は肢を折ると激痛に押し寄せられ、その場でふらふらと舞う。

 だが〈キーストン〉は、前方から5歩10歩、足先をひきずりながら、戻ってきた。そして倒れて意識を失っている山本騎手をつつく。山本がようやく起つ。馬は山本に寄り添って離れない。

 骨折した馬は、500kgに近い体を支えられず、内臓疾患を起こす。薬殺処分のほか、道はない。〈キーストン〉は最後の別れを山本に告げていた。このようすは〈YouTube〉で見られる。

 障害レースに200勝し、平地でも157勝するという前人未到の記録を持つ元・騎手、現・調教師・田中剛(52)も、馬との別れは数多くあった。

「脚が折れるときは、ボキッでも、グリッでもない音と一緒に、下から、不気味なものが這いあがってきます。連日の調教に耐え、ギャンブルの対象にされ、ひっくり返って脚を折って殺される。俺はなんでこんな仕事を選んだのかと、そのたび泣きました。しかし、勝ちも負けもおのれのケガも馬との別れも、すべて含めて、レースは次に進むんです」

 障害レース中の落馬で後ろの馬が突っ込んできたことがあった。くそっ、骨折れたのかよ。ジョッキールームで救急車を待つあいだ、缶ビールをあおった。病院に着いたが、2時間ほど待たされるという。寿司屋に行った。探しにきた女房が声をあげる。「あんた何やってんのよ」

「頭にきたから、飲んでんだ」
 
 入院して、戻ってきた。片腕で乗った。さすがに力が入らない。

「でも、勝っちゃった。そのあとも4連勝。ただそれから大変で。骨をつないでいたボルトとワイヤーがだめになり、骨盤からとった骨に入れ替えて」

 結局、半年休んで、思った。

「挫折を教えてくれる競馬だから、生きられた。少しは成長できた」

※週刊ポスト2013年5月3・10日号

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン