芸能

福山雅治の「ガリレオ」 まるで白衣着た水戸黄門と女性作家

 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏がお届けするドラマ時評。今回は2013年春ドラマについて俯瞰する。

 * * *
 春のドラマが一斉にスタート。はたして新クールのドラマたちは、新しい世界との出会いと発見を、いかに提供してくれるのでしょうか?

 蓋を開けてみれば、福山雅治主演月9の『ガリレオ』(フジテレビ系)が数字的に圧勝の気配です。第2話の20.5%(関東地区・ビデオリサーチ)は、「家政婦のミタ」以来の高視聴率好発進ぶりとか。

 白衣にチョーク、数式に謎解き。「全ての事象には必ず理由がある」「量子状態について分析する」「立証もできなければ反証もできない」……福山演じる物理学者・湯川学。論理的口調で事件のトリックを次々に暴いていくお定まりのシリーズ。

 たしかに、前のシリーズと映画版の固定ファン、そしてミュージシャン・福山のファンを確実に取り込んで、安定した視聴率を確保といったところ。白衣を着た遠山の金さんか、水戸黄門か。いわば、福山雅治という人気者の魅力にがっつり依存したコンサバドラマ。不変の「型」を見ることでほっと一安心したい人にはぴったりの娯楽作品に仕上がっています。

 でも。そもそも「ドラマツルギー」とは何でしょう?

「ドラマ」の語源は、ギリシア語の「ドラーン」。それは「動く」「行動する」という意味。 いったん創り上げた舞台・役から、絶えず「動き」、新しい人物像に果敢に挑戦していく。そんな役者のゆらぎの中に、ドラマツルギーがあるとすれば……。

 今クールのドラマの中から、新しい世界と出会えそうな、ドラマツルギーの気配を漂わせる作品をピックアップ。

 米倉涼子演じる『35歳の高校生』(日本テレビ・土曜日21時)。何の因果か、35歳で全日制公立高校へ入ることになった主人公・馬場亜矢子。クラスメイトから「ババア」呼ばわりされ、蔑まれる。教室には陰湿ないじめ、ねちねちとした脅しと複雑でダークな問題が充満している。

 若者だらけの舞台に放り込まれた中年女が、ねじくれた若い魂と真正面から向き合っていくこのドラマ。体当たりで走ってきた米倉涼子という人の、実人生の強さとすがすがしさがにじみ出てきそう。そのあたりにドラマチックな匂いがたちこめています。

 もう一本、武井咲演じる全身黒づくめの『お天気お姉さん』(テレビ朝日・金曜日23時15分)。無愛想で「爆弾低気圧女」と呼ばれる風変わりな気象予報士。気象知識をもとに事件を解決していく展開は、ちょっと『ガリレオ』にも通じています。が、武井咲の黒頭巾気象予報士はまったく新しい役柄世界への挑戦。女優がゆらぐ瞬間のスリルに立ち会うことができます。

 その意味で、ゲゲゲの女房でブレイクした松下奈緒主演『鴨 京都に行く』(フジ火曜21時)は、残念ながらその反対。東大卒の旅館の女将が仲居に嫌みを言われ……あまりにも安易でスカスカの図式的構成で、ゆらぐスリルが感じとれない。「京都」でオールロケが売りのドラマだそうですが、内容がそのコストに見合っていない。新しい発見に出会えそうな気配が感じられない残念さ。

 そして、大注目の朝ドラ『あまちゃん』(NHK)も1か月を経過したところ。ここ1年間ほど続いた朝ドラの内容の低調ぶりを、気持ちよく転換してくれそうな気配です。クドカンの脚本につっこみどころもありますが、それはまた次回のコラムに。

関連記事

トピックス

水谷豊
《初孫誕生の水谷豊》趣里を支え続ける背景に“前妻との過去”「やってしまったことをつべこべ言うなど…」妻・伊藤蘭との愛貫き約40年
NEWSポストセブン
世界選手権でもロゴは削除中だった
《パワハラ・セクハラ問題》ポーラが新体操日本代表オフィシャルスポンサーの契約を解除、協会新体操部門前トップが悔恨「真摯に受け止めるべきだと感じた」
週刊ポスト
辞職勧告決議が可決された瀬野憲一・市長(写真/共同通信社)
守口市・瀬野憲一市長の“パワハラ人事問題”を市職員が実名告発 補助金疑惑を追及した市役所幹部が突然の異動で「明らかな報復人事」と危機感あらわ
週刊ポスト
新井被告は名誉毀損について無罪を主張。一方、虚偽告訴については公訴事実を全て認めた
《草津町・元町議の女性に有罪判決》「肉体関係を持った」と言われて…草津町長が独占インタビューに語っていた“虚偽の性被害告発”
NEWSポストセブン
当時の事件現場と野津英滉被告(左・時事通信フォト)
【宝塚ボーガン殺人事件】頭蓋骨の中でも比較的柔らかい側頭部を狙い、ボーガンの矢の命中率を調査 初公判で分かった被告のおぞましい計画
週刊ポスト
世界陸上の最終日に臨席された天皇皇后両陛下と愛子さま(時事通信フォト)
《雅子さまの優美な“かさね色目”コーデ》土砂降りのなか披露したライトグリーンの“親子リンクコーデ” 専門家が解説「江戸紫のスカーフとの日本伝統的な色合わせが秀逸」
NEWSポストセブン
田久保真紀市長が目論む「逆転戦略」は通用するのか(時事通信フォト)
《続く大混乱》不信任決議で市議会を解散した伊東市の田久保真紀市長 支援者が明かす逆転戦略「告発した市議などを虚偽告発等罪で逆に訴える」
週刊ポスト
古い自民党長老政治の再生産か(左から岸田文雄氏、林芳正氏、加藤勝信氏/時事通信フォト)
《自民党総裁選》小泉陣営に飛び交う「進次郞内閣」の閣僚・党役員人事リスト 岸田文雄氏が副総理兼外相、林芳正氏は財務相、官房長官は加藤勝信氏が“内閣の骨格”か
週刊ポスト
青ヶ島で生まれ育った佐々木加絵さん(本人提供)
「妊活して子どもをたくさん産みたい…」青ヶ島在住の新婚女性が語る“日本一人口が少ない村”での子育て、結婚、そして移住のリアル
NEWSポストセブン
祭りに参加した真矢と妻の石黒彩
《夫にピッタリ寄り添う元モー娘。の石黒彩》“スマホの顔認証も難しい”脳腫瘍の「LUNA SEA」真矢と「祭り」で見せた夫婦愛、実兄が激白「彩ちゃんからは家族写真が…」
NEWSポストセブン
群馬県前橋市の小川晶市長(42)が部下とラブホテルに訪れていることがわかった(左/共同通信)
《目撃者が明かす一部始終》「後ろめたいことがある人の行動に見えた」前橋・女性市長の“ラブホ通い詰め”目撃談、市議会は「辞職勧告」「続投へのエール」で分断も
NEWSポストセブン
本誌記者の直撃に答える田中甲・市長
【ダミー出馬疑惑】田中甲・市川市長、選挙でライバル女性候補潰しのために“ダミー”の対立女性候補を“レンタル”で擁立した疑惑浮上 当の女性は「頼まれて出馬したのか」に「イエス」と回答
週刊ポスト