ビジネス

水事業など旧来の商社スタイルにない新ビジネスモデルが誕生

 誰もが名前を知る有名企業であり、学生の就職ランキングでも上位にあるとはいえ、「商社は何をやっている企業なのかわかりにくい」

 そう言われる理由のひとつが、広範な事業を手がけ、グループ内に多くの連結企業を抱えていることだろう。

 三菱商事は世界に600社以上の連結企業を持つ。さらにそれらの子会社などを含めると、世界中に“三菱商事ネットワーク”が張りめぐらされていることになる。

「世界中に投資先を急激に増やしたのは1990年前後から」と語るのは三菱商事元幹部。同社は1997年3月期にはすでに567の連結企業を有しており、「その後も毎年約20~50社をEXIT(売却、撤退など)しながら、同規模かそれ以上の新規投資先を海外中心に開拓してきた」という。

 大きな背景に「商社の業態が変わってきた」ことがある。同社取締役会長の小島順彦氏はこう説明している。

「総合商社は、世界に類を見ない非常にユニークな業態です。三菱商事は、最近ではトレーディングから事業投資へとビジネスモデルを広げ、あらゆる産業の川上から川下において、自らが事業経営に参画するようにもなりました」(同社HPより)

“貿易・取引会社”から、“投資会社”への変化──。60%出資するオーストラリアTRILITY社の水事業のように同社が最大株主として運営に携わる事例、さらには、中国最大の食料関連企業・中糧集団(COFCO)と組んで中国の食肉事業に乗り出すなど、以前の「商社」のスタイルでは考えられなかったビジネスモデルが次々に生まれている。

 日本企業は<六重苦>、すなわち「円高」「高い法人税」「厳しい雇用規制」「温室効果ガス規制」「自由貿易の遅れ」「電力不足」に苛まれていると言われる。「円高」だけは直近ではいくらか緩和されたが、リーマン・ショック前から比べればまだかなりの円高水準にある。

 さらに、少子化、労働人口の減少などで国内市場は縮小傾向だ。<六重苦>の日本にとどまらず海外でビジネスを展開するのは必然の選択と言えよう。世界中に拠点を作れば、そこから上がってくる情報でリスクコントロールしつつ新規事業を開発できる。

 もちろん「資金を投じる」だけでは、投資ファンドと変わらない。これまで培ったノウハウ、人材、時間を投じて事業に関わってこそ、商社として存在感を発揮できる。今後はビジネスチャンスを見つける“目利き”の力と、膨大な連結企業を束ねる経営力が問われるだろう。

※SAPIO2013年6月号

関連キーワード

トピックス

10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
前回は歓喜の中心にいた3人だが…
《2026年WBCで連覇を目指す侍ジャパン》山本由伸も佐々木朗希も大谷翔平も投げられない? 激闘を制したドジャースの日本人トリオに立ちはだかるいくつもの壁
週刊ポスト
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン