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アフラックの創業者に対して「まぶしいほど欠点のない人」評

【書評】『縁 人の輪が仕事を大きくする アフラック創業者・大竹美喜の軌跡』馬場隆明著/KKベストブック/1575円

【評者】山内昌之(明治大学特任教授)

 がん保険のアフラックを知らない人は少ないだろう。創業時にわずか10人たらずの社員でスタートしたこの会社は、いま日本でいちばん成功した企業の一つである。ここまで育てた創業者の大竹美喜氏が「立志伝中の経営者」であることは間違いない。

 しかし著者は、氏が企業人として優秀なことに加えて、人柄と識見が群を抜いて素晴らしいことを教えてくれる。がんについては告知しないのが普通の時代に、既得権維持に汲々とする生保業界の反対をものともせず、政治家や役人から支持を取り付けたのは、氏の人間的魅力があったからだ。一流の役人OBや経営者たちが異口同音に語るのは、氏が他人の思いに共感する力が強く、話していると時を忘れてすがすがしい気持ちにさせてくれる人だという点である。

 広島の山間部に生まれて苦学した氏は、いわゆるエリート・コースを歩んだ人ではない。しかし、アメリカへの渡航から政治家の下での秘書修業まで実に多くの職業を経験した。苦労人には違いないにせよ、堂々たる愛国者であり知識人でもあるのだ。ロシア史でいう「インテリゲンツィア」とは、日本でいえば氏のような人を指すのかもしれない。

 誰かに人を紹介する時や紹介を頼まれた時には、わざわざ出かけて同席する。それでいて少しも恩着せがましくないのである。自然に人の喜びや悲しみを自分のものにできる氏の個性がよく描かれている書物なのだ。きっと著者もどこかで氏の大ファンになったのだろう。

 日米経済摩擦の緩和から日米・日中の文化交流に至るまで、氏は国のためにも随分働いている。私塾をつくるほどの教育への情熱は、安倍政権での教育再生実行会議の委員としても生かされており、まぶしいほど欠点のない人なのである。大企業の舵取りを失敗したり私心の多い経営者もいる昨今、読者を元気づけてくれる本物の経済人を知る喜びは大きい。

※週刊ポスト2013年6月7日号

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