国内

介護保険「“要支援”切り離しは国の既定路線」と専門家分析

 離れて暮らす母(78才、北海道札幌市在住)の元を週に1度訪れて、身の回りの世話をしてくれるヘルパーさんの存在が、A子さん(主婦・47才、東京都在住)には心強い。数年前に父が死亡。以来、ひとり暮らしの母は1年前、散歩中に転んでからというもの、杖を手放せなくなり、家の掃除もままならなくなった。

 当初は週末を利用して月に2度ほど母を訪ねていたA子さん。母が介護保険「要支援2」の認定を受け、訪問介護サービスを受けられるようになって、その必要はなくなった。介護保険の適用により、ヘルパー代の自己負担額1300円も、今のところ母の年金でまかなえている。

 ところが、その介護保険が、早ければ2年後から利用できなくなる恐れが出てきた。「厚生労働省が介護保険制度を見直す」と全国紙で相次いで報じられたが、そのきっかけは、4月22日に開かれた厚労省の有識者会議で、委員からこんな発言が出たことだった。

「要支援1・2への給付を、介護保険の対象から除外する可能性も含めて検討する必要がある」

 介護保険制度で、比較的軽度とされる「要支援1・2」を切り捨てるべきという提案だ。厚生労働省は女性セブンの取材に、「報道が先走っているだけ。具体的に何も決まっていない」と説明したが、介護保険情報を提供する民間団体『市民福祉情報オフィス・ハスカップ』主宰の小竹雅子さんは、「切り離しは国の規定路線」と語る。

「厚生労働省は、もう何年も前から要支援を制度から切り離す準備をしています。介護保険制度は3年ごとに見直しをするので、次に見直しする2015年度に改定しようと考えているのではないでしょうか」(小竹さん)

 切り離しの目的は、増加する介護費用を抑えることにある。高齢化に伴い、2010年度7.8兆円だった介護費用は、2025年度に3倍近い21兆円に達する見通しだ。40才から毎月支払う介護保険料も、現在の4972円から2025年度には8200円程度になるとみられる。

 高齢化社会に対応するために介護保険制度が始まったのは2000年。2006年には受給者が「要支援1・2」「要介護1~5」の7区分に分けられることになった。

「介護が必要な『要介護1~5』と異なり、『要支援1・2』は、手厚い介護を必要としないレベルです。この段階から行う訪問介護、デイサービスなどの介護サービスは、自立した生活が継続できるよう支援し、要介護になるのを防ぐねらいがあります」(介護ジャーナリスト・小山朝子さん)

 しかし軽度とはいえ、要支援者の平均年齢は81才なので、注意が必要だという。

「高齢者はちょっとした怪我や病状の変化ですぐに要介護になる可能性を抱えています。こうしたかたがたが介護サービスから切り離されると、極めて深刻な影響が考えられます」(小竹さん)

※女性セブン2013年6月13日号

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン