国内

排斥デモ参加者 自分は被害者で失われた権利回復活動と主張

 東京の街中で起こっている許されざる事態についてともに考えていただくため、あえて、彼らの言動そのままを記すこととする。

「朝鮮人は寄生虫、娼婦、変態です! 早く死んでくれたまえ!」
「いつまで日本に居続けるつもりだよ? ここで大虐殺始めてやろうか?」
「皆さん、朝鮮人の女を見つけたらレイプしていいんですよ!」

 それらは6月16日、東京・新大久保で行なわれた在日韓国人・朝鮮人の排斥デモで叫ばれた罵詈雑言の数々である。

 聞くに堪えないこれらの人種、民族差別的な発言は「ヘイトスピーチ(憎悪発言)」と呼ばれる。まさか公衆の面前でそんな言葉を吐く大人がいるとは信じられない読者も多いことだろう。だが現実に、新大久保以外にも、大阪・鶴橋といった全国各地のコリアンタウンで毎週末のように叫ばれているのである。

 この日、集まったデモ隊は男女合わせて200人ほど。半分以上は20~30代の男性だが、女性も少なくない。20代のOL風や、ベビーカーを押しながら叫ぶ30代の母親らしき女性もいた。

 手には日の丸や旭日旗、そして〈良い韓国人も悪い韓国人もどちらも殺せ〉、〈朝鮮人ハ皆殺シ〉などと書かれたプラカードを掲げ、拡声器越しに叫びながら練り歩く。

「朝鮮野郎はなぶり殺してやるから出てこい!」
「在日韓国人は社会のゴミ、病原菌! 今すぐ抹殺しなければならない」
「ゴミはゴミ箱へ。朝鮮人は朝鮮半島へ」

 時間が経つにつれて叫び声は大きくなり、拡声器は「キーン」とハウリングを繰り返す。中には金切り声でロック歌手よろしく絶叫する者もいた。その声量とともに、ヘイトスピーチの中身も次第にエスカレートしていく。

「(韓国料理店に向かって)オラッ! 勝手に日本で商売してんじゃねえよ! キムチくせえんだよォ! ぶち殺してやるぞォ!」
「朝鮮人はウンコでも食ってろっての!」
「ゴキブリ、ウジ虫、朝鮮人! お前らを一匹残らず叩き潰す」

 その表情は興奮に満ちていた──。彼らの行動原理は、彼らの弁でいえば“愛国心”。「行動する保守」を自称し、インターネットで仲間を集めてデモを起こすためにネット右翼、略して「ネトウヨ」と呼ばれている。

 どういった素性の人たちなのか。『ネットと愛国』(講談社刊)などの著書があり、ネトウヨについて詳しいジャーナリストの安田浩一氏がいう。

「当初は貧しくて仕事がない若者が中心でしたが、最近では普通のサラリーマンや公務員、主婦、中学生から高齢者までと幅広い層が参加しているようです。彼らはみな自分たちは“被害者”だという共通認識を持っています。

 在日朝鮮人には様々な特権があり、行政や言論機関は彼らに牛耳られており、今の日本は在日に支配されているといった情報をインターネット上で入手して、それが真実だと思い込んでいる。その“奪われた権利”を取り戻すために正義の活動をしていると信じているのです」

 ネトウヨには自分たちが差別しているという意識はない。むしろ“自分たちが差別されている”と思い込んでいるのだという。

 その意識は団体の名前からも読み取れる。16日の新大久保デモの主催は『新社会運動』なる団体。他にも最大規模の約1万3000人のメンバーを持つ『在特会(在日特権を許さない市民の会)』や『日侵会(日本侵略を許さない国民の会)』などがある。

※週刊ポスト2013年7月5日号

関連記事

トピックス

『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン