スポーツ

元巨人・西武の鹿取義隆氏 球団からの1億円提示固辞した理由

 スポーツライターの永谷脩氏が往年のプロ野球名選手のエピソードを紹介するこのコーナー。今回は、巨人と西武の2チームで優勝に大きく貢献した名リリーフ・鹿取義隆氏のエピソードだ。

 * * *
 ソフトバンク・千賀滉大がパ・リーグの救援投手として「連続無失点イニング記録」を達成した。優勝の鍵を握るとして救援投手が再び注目を集める中、ふと思い出したのは、文句も言わず黙々と19年間、755試合を救援として投げ続けた男のことだ。巨人・西武で活躍した鹿取義隆である。

 巨人時代は王貞治監督の下、年間63試合に登板。「ピッチャー・鹿取」は流行語にもなり、その健気さは“サラリーマンの鑑”と言われた。90年の西武移籍後は、潮崎哲也・杉山賢人とともに「サンフレッチェ」(三本の矢)としてリリーフ陣を支え、黄金時代に貢献している。

 かつて、エースだった東尾修が鹿取に聞いたことがある。

「お前、文句も言わず投げ続けているけど、体のことも少しは考えた方がいいんじゃないか」

 その時、鹿取はこう答えた。

「東尾さんはエースで、代わりはいませんから、わがままを言っていいんです。でも、僕らの代わりはいくらでもいます。だから、与えられた職場をただ必死に守るだけなんです」

 その姿勢は契約更改でも出ていた。西武時代に活躍を評価され、球団に1億円を提示されるものの、「救援で1億円なんてもらってしまうと、残されているのは引退だけ。9000万円で本当に結構です」と固辞している。

 当時は1億円の大台こそがプロ野球選手のステータスだったが、拒否したのは己を知っていたからだった。昔からプロ野球では、「超二流の集団は優勝の確率が高い」という名将・三原脩の言葉があるが、これは己を知っている男達の集まりという意味なのかもしれない。

※週刊ポスト2013年7月12日号

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン