国際情報

中国 「お人好し」日本を徹底的に悪者にし国民の不満そらす

「歴史認識問題」はなぜ繰り返されるのか。橋下徹・大阪市長が言及した慰安婦問題に限らず、南京事件、尖閣・竹島領有問題などでこれまで日本はいつも歴史を捏造する「悪者」にされてきた。しかし現実は全く逆で、中国、韓国は日本を批判するために自国の歴史教育を嘘と作り話で固めてきた。中国、韓国の歴史認識について、画期的な日本史研究でも知られる作家の井沢元彦氏が考察する。

 * * *
 なぜ中国、韓国は歴史を捏造するのかそれについて一言で答えるならば、中韓両国はそれぞれ国内に深刻な問題を抱えており、その問題に対する国民の不満をそらすために日本を悪者に仕立て上げスケープゴートにしている。そして、そのために歴史を歪曲捏造しているということだろう。

 まず中国は、その政府が共産党による一党独裁体制という前近代的な政府であることに最大の原因がある。この時代遅れの権力に何とかしてしがみつこうとしている、少数のエリートである中国共産党員にとって、20世紀最大のショックであったのがソビエト連邦の崩壊(1991年)であったろう。

 中華人民共和国にとって先輩でもある共産主義国家ソビエト連邦の崩壊は、中国共産党にとって近い将来の滅亡を感じさせるものであった。そこで中国共産党政府は国民の不満をそらすために大胆に資本主義を取り入れることにした。
 
 資本主義とは経済における自由主義のことだが、経済だけは自由にさせ政治はあくまで共産党が握るという根本的に矛盾した政策を採用したのである。香港がイギリスから中国に返還された時も「本土化」しなかったのはそのためである。

 しかしいかに経済だけとはいえ国民が自由の味を知った以上、その不満は一党独裁の中国共産党へ向かう。政治も自由化すべきだということだ。もちろん共産主義のままでいいという保守的な国民もいるのだが、そうした国民は経済自由化の波に乗り遅れ窮乏化した。

 経済的平等を国是とするはずの共産主義国家なのに、一方でとびきりの金持ちがいて、電気もない村に住んでいる農民もいる、というトンデモナイ国家に中国は変貌してしまった。国民の不満は募るばかりである。

 そこで中国は日本という「お人好し国家」を徹底的に悪者に仕立て上げ、国民の不満をそらす政策をますます強化した。ますますというのは、この政策はまだ経済的不平等が深刻化する以前から、日本嫌いの、そして時代遅れの共産主義が正しいと確信する指導者江沢民によって進められていたからだ。「日本は未だに中国侵略をもくろんでいる」などという反日教育はもう20年以上前から始まっている。

 ところが村山富市元首相や河野洋平元衆議院議長のような「お人好し政治家」はその間「日中友好」を唱える中国側の言いなりになって、巨額のODA(政府開発援助)等野放図な援助を進めてきた。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト