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朝井リョウ新作「子供たちの姿を繊細な言葉で描いている」評

【書評】『世界地図の下書き』(朝井リョウ/集英社/1470円)

【評者】今井麻夕美(紀伊國屋書店新宿本店)

 朝井リョウの新作が出た。プレッシャーと期待のなかで紡がれる受賞後の第一作は、作家の真価が問われると思う。本作を読んで私が感じたのは、「朝井リョウ、やはり只者ではない!」ということだ。

 両親を事故で亡くし、小3の夏、児童養護施設「青葉おひさまの家」に来た太輔。太輔は同じ班の4人と日々を送ることになる。

 同い年でいじめられっ子の淳也。その妹の麻利。太輔の1才下ながら女王様キャラの美保子。班のお姉さん的存在で6才上の佐緒里。

 佐緒里はなじめない太輔をフォローし、「願いとばし」の行事を見に行こうと約束してくれる。

「願いとばし」はランタンを飛ばして願い事をする行事で、太輔の家族の思い出ともつながる大切な行事だ。

 しかし、実現はしなかった。佐緒里は遠く離れた街で入院する弟に会いに行っていたのだ。みんなに家族がいることを改めて実感し、太輔は二重に裏切られた気持ちになる。

 が、うちひしがれる太輔に、班のみんながとったある行動が5人を仲間にする。

 日々を重ねて3年。あと半年で、佐緒里が高校卒業と同時に施設を出ることになった。佐緒里が憧れのアイドルを見てつぶやいた言葉を聞いた4人が決行する〈アリサ作戦〉とは…?

 施設と学校、親ではない大人たちに見守られて彼らは育つ。制限は多いし、理不尽な目にあっても本当の意味で帰る場所はない。そのぶん、外の世界への憧れと不安が強い。大きな世界には、どんな自由が待っているのか。そこに自分の居場所はあるのかと。

 朝井さんは、場所を失った孤独な子供たちの心もとなさを、繊細に研ぎ澄まされた言葉で描く。何度も胸がぎゅっとなった。

 例えば、仲間でも分け合えない孤独があることを知った夜、太輔は思う。

<みんな、それぞれ宇宙の中にひとりっきりなんだ。>

 そして、<逃げた先にもちゃんと、これまでと同じ広さの道があるの。>という一行。逃げてもいい。その先に希望があるかもしれない。かすかでも何かを信じるだけで、というかそのことだけが人を歩ませるのだろう。

 少年が孤独を抱いて世界へ歩きだすシーンに、私は泣いた。歩きだすごとに、世界地図は無限にひろがっていく。

※女性セブン2013年8月22・29日号

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