国内

自殺サイト 参加者同士が心理的に支え合う側面ありと専門家

 2000年代、ネットを介した請負殺人者嘱託殺人事件が相次ぎ、プロバイダの規制や警察当局の「闇サイト」への取り締まりが強化された。ところが、皮肉なことにさらなるアングラ化が進み、ネットの暗部で犯罪者集団は蠢いている。ジャーナリスト・渋井哲也氏がネットに潜む犯罪者たちの動向をリポートする。

 * * *
 復讐代行を目的としたサイトは今なお存在する。そのひとつにコンタクトを取り、「別れた彼女に復讐したい」との架空の依頼を持ちかけると、管理人は具体的な内容を話し始めた。

「彼女の勤務先を知っているのなら、その女性を辞職に追い込むというのはどうでしょう。悪い噂を流すなどして、会社に居づらくなるようにする。会社を絡めると、社会的な制裁ができますよ」

 復讐工作に要する期間は約3か月、費用は案件の難易度に応じて30万~70万円とのことだった。人件費やリスクを考えれば、リアリティーのある数字と言えなくもない。殺人や襲撃はあまりにリスクが大きいが、嫌がらせ程度なら引き受ける業者があっても不思議ではない。

 実際に、誹謗中傷ビラや怪文書を復讐対象の周辺に撒いたり、イタズラ電話を代行するという業者もあった。「あなたに代わり呪いの代行をする」という別の業者は、呪詛で相手にダメージを与えると話していた。バカバカしいと思う半面、依頼者の怨念を考えると、それはそれで不気味だ。

「自殺サイト」も相変わらず多い。15年ほど前の「ドクター・キリコ事件」では、自殺サイトで相談役を引きうけていた男性が、ネットで知り合った女性に青酸カリを送付。女性はこれを飲み自ら命を絶った。後に男性も青酸カリを飲んで死亡している。

 こうした悲劇が相次いだにもかかわらず、未だに自殺サイトが盛況なのは、アクセスした者同士が心理的に支え合う側面もあるからだ。それぞれのサイトには「自殺者募集禁止」や「自殺ほう助禁止」などが明記されているが、サイトで知り合った者同士がメールや電話でやりとりすれば一切表に出てこない。

●渋井哲也(しぶい・てつや):1969年栃木県生まれ。東洋大学法学部卒業後、「長野日報」を経てフリーに。ネット犯罪、教育問題、少年犯罪などについて取材を続ける。主な著書に『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎新書)、『ウェブ恋愛論』(ちくま新書)、『若者たちはなぜ自殺するのか』(長崎出版刊)など。

※SAPIO2013年9月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン