芸能

NHK『ガラスの家』で美貌の後妻演じる井川遥への違和感とは

 実績十分の脚本家による意欲作。時代のトレンドを意識した構成にも抜かりない。だが、女心は必ずしもそれだけでは満たされないものらしい。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
「官能的、じゃなくて、あれは単なるエロよ」

 NHK「ドラマ10」の枠でスタートした『ガラスの家』(9月3日~火曜午後10時)。『セカンドバージン』で現代女性の新しい生き方を力強く書き上げ話題を巻き起こした大石静が、さらに美しく逞しい女性像をオリジナルで描く--そんな宣伝文句が躍る、注目のドラマです。

 対する視聴者の感想を聞いて、思わずうなずいてしまいました。なぜって、カメラワークに冒頭から「ギョッ」とさせられたから。

 井川遙演じる主人公・黎。カメラは、彼女のうなじや太ももを舐めるように移動していく。胸の谷間、口もと、足首。一度や二度ではない。偶然ではない。女の体を強調するそのカメラワークは、斉藤工演じる仁志の視線として描かれています。

 制作側はきっと「狙っている」のでしょう。こんな風に、「エロい」と話題になることを。

 でも、「ドラマ10」の固定客である女性視聴者にとってはどうなのか。「単なるエロよ」と言い放った視聴者の感想の中に、「視聴者を舐めてもらっては困る」という批評性を感じてしまいました。

『ガラスの家』のストーリーは「禁断の恋」。主人公・玉木黎の結婚相手は年上の財務省のエリート官僚。再婚の彼には、息子が二人。男ばかりの家族に突然現れた若き母・黎に、息子の仁志は急速に惹かれていく。それに気付いた父は息子に嫉妬を覚え、家庭内では波風が立ち始めて……。たしかにスリルが潜んでいそう。

 NHKの「ドラマ10」という枠は、個性的です。「30代、40代の女性層にターゲットを絞った」とNHKも明言しているように、『八日目の蝉』『はつ恋』『セカンドバージン』『シングルマザーズ』など、女性たちの心に切実に訴えかける秀作を次々に生んできました。

 必死に子育てをし、仕事や家事に取り組んできた女たちが、これからどのように自分らしく生きていけばいいのか。そんな真剣な問いかけに答えようとする迫力ある作品が多かった。

 不倫、DV、赤ちゃん誘拐、といった際どいテーマを扱ってきたけれど、浮き足立つことなく人間の心の揺れや複雑さを丁寧に細やかに描いてきた。だから、主人公に自分自身を重ねて観る女性視聴者が多かったのです。

 では、今回の『ガラスの家』は?

 女目線の描写よりもオヤジ目線、男目線が目立ち、井川遥を見て発情するオトコたちの視線が強調されているとすれば。女の体を舐めるねっとりしたカメラワークによって、女性視聴者の感情移入が邪魔されるとすれば。

 女性たちの代弁者という「ドラマ10」の役割が、破綻してしまわないでしょうか?

 おそらく制作側としては、若くてハンサムな息子(斉藤工)に惚れられる年上の母(井川遥)という設定によって、女性視聴者に気持ちよくなっていただくと同時に、井川さんにべっとりまとわりつくカメラワークで男性視聴者の人気もいただこう、という贅沢な目論見なのかもしれません。

 が、ウケ狙いもやりすぎると、両刃の剣になります。女性視聴者は「官能的」なドラマを望んでも、「単なるエロ」は望んでいない……?

「魅力的な井川遥さんを眼前にしてしまっては、男たちは身の破滅を予感しつつも、全く抗う術など無いのかもしれないが……」(番組ホームページ)という演出家の言葉があまりに意味深です。

「ドラマ10」の固定客だった女性視聴者たちが、これからも『ガラスの家』についていくのか、見続けていくのかどうか。二兎を追ったこのドラマが、今後どんな反響を得るのか。興味深いものがあります。

 冒頭の感想を語ってくれた「ドラマ10」固定客のその女性は、こうも言いました。

「私が観たいのは、胸がときめくドラマなの」

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン