国内

滝クリのおもてなしスピーチ「左手のつぼみ」が効果大だった

「お・も・て・な・し」。滝川クリステルさんの五輪スピーチが話題だ。そこに込められた技術とはなにか。元仙台放送アナウンサーでプレゼン術などを大学などで教えているスピーチジャパン講師の早坂まき子さんが語る。

 * * *
 滝川クリステルさんのスピーチには3つの特徴があると思います。

1)ゆっくりのおもてなし、と普通の会話スピードのおもてなしと2回言ったこと。
2)1回目は手の動き(ジェスチャー)をつけたこと。
3)2回目は、手を合わせておがむような、お辞儀をしたこと。

 まず、「ゆっくり喋る」というスピーチ技術の「基本のき」を取り入れています。みなさんも、大切なことを伝えたいスピーチの相手が幼稚園児や耳の遠い高齢者などの場合、相手がしっかり理解できるように、ゆっくり噛み砕いた言葉で、丁寧に喋るはずです。今回のIOC委員は様々な国の方々であり、年代も異なるでしょう。すると、どんな人にでも伝わるように、ゆっくり喋るという技術を使うのは当然のこと。

 そこにあえて普通のスピードの「おもてなし」を繰り返し2回言うことで聞き手に、

「この『おもてなし』というは大切なキーワードなのだな」

 と、印象を残します。「おもてなし」を1回だけしか言わないスピーチと、2回言うスピーチ。心に残るのはどちらかは、歴然です。

 さらに、「おもてなし」に合わせて、左手でつぼみのように縮めた形を作っています。あの手の動きも「おもてなし」という単語と共に、皆さん印象に残っているはず。簡単な動きなので、私も何人も真似している友人、知人に出会いました。真似しやすいですよね。

 あの「お・も・て・な・し・」のときに手のジェスチャーがなかった場合を想像してみましょうか。滝川さんは、ずっとカメラ目線で、瞬きをせず、一点を見つめています。それは、カメラを通し会場の大きなスクリーンに映し出されるからなのでしょうが、一点を見つめたまま、手の動きがない「お・も・て・な・し」……動きがあったほうが、印象に残りませんか?

 しかも手が加わることにより、5音から成り立つ単語であることも伝えています。日本人なら聞き慣れている「おもてなし」は、日本語が分からない外国の方からすれば「え?何?何言っているの?」と分からないはず。でも、手が加わることによって「5音から成り立つ良い言葉らしい」ということが、瞬時に伝えられます。

 推測ですが、どなたかが、手を付けたほうが印象に残るだろうと、アドバイスされたのではないでしょうか。

 2回目の「おもてなし」で両手を合わせて拝むようにお辞儀するのは、日本のマナーや慣習にないですよね。タイなどでは「こんにちは」などと挨拶の際に行う動きです。ネットでは「日本人の作法じゃない」という批判的な意見もありました。

 でもあえて、あの2回目の通常のスピードの「おもてなし」の動きにも意味があるのでしょう。欧米をはじめ海外の方から見て、わかりやすいアジア人の立ち居振る舞いを体現したのがあの動きだと思います。

 日本人からすると「ちょっとあれは日本人は普段しないかな」と違和感があっても、今回の目的はIOC委員に熱意を伝えるためのプレゼンテーションです。国語辞典にある「心をこめて客の世話をする」という意味がある「おもてなし」の単語とその意味を、いかにわかりやすく、表現するか、と熟考したうえでのジェスチャーと捉えられます。

 ちなみにメジャーの川崎宗則選手も米国のテレビ番組に出演した際、両手を合わせてお辞儀していました。外国人にとって、日本人やアジア人らしい仕草と捉えられているようですね。

 2回目のお辞儀をする動きも、動きがあるのとないのでは、全く印象が異なります。

 あの滝川クリステルさんのスピーチの中の2回の「おもてなし」は「IOC委員をはじめ、全世界の人にいかにわかりやすく伝えるかを熟考し計算された上でうまれたプレゼンテーション」だと思います。

関連記事

トピックス

「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト