ライフ

遺言状 相続人全員が合意すればその内容を無視することも可

 まさに骨肉の争いというように、身内同士がもめてしまうのが相続。64才の真一さん(仮名)もまた、相続でもめている1人だ。4人きょうだいの中で親の世話を最もした長男・真一さん。ところが、母の遺言は「次女と次男に半分ずつ財産を相続させる」というものだったのだ──。

 そうした事例を、自身のラジオ番組等で数多く見聞きしてきた生島ヒロシさんは「“争族”を避けるには、相続の正しい知識と早めの準備が大切です」と説く。生島さんが、真一さんのケースを詳しく解説する。

 * * *
 自分の死後、愛する家族たちに遺産分割をめぐって争ってほしくない。そのため、生前に「どのように遺産を分けるか」を指示したものが遺言です。いわば、遺言は遺された家族へのラブレター。彼らに幸せに暮らしてもらうためのメッセージだと私は思っています。

 ところが、ときにはその遺言が原因でトラブルが起きてしまうこともあります。

『夢相続』代表取締役で、公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士の曽根恵子の元に相談に訪れた真一さんは4人きょうだいの長男でした。妹が2人、弟が1人います。お父さんはすでに他界。お母さんは東京都心にビルを持ち、最上階にひとりで暮らし、他のフロアにはテナントを入れていました。現金や株などの資産もかなり持っていたそうです。

 お母さんの死後、次女の佳子さん(仮名・54才)と次男の浩二さん(仮名・52才)が公正証書遺言を持ってきました。それを読んだ真一さんは目を疑いました。なんと「財産は佳子と浩二に半分ずつ相続させる」と書いてあるではありませんか! 真一さんと長女のことは、ひとことも触れられていません。

 若い頃に両親の仕事を手伝い、ビルを建てたときには借金の連帯保証人にまでなった真一さんは、とうてい納得できませんでした。とはいえ、遺言が法的に有効なものである以上、今さらどうしようもありません。

「自筆証書遺言は簡単そうに見えますが、形式に不備があって無効になることが多いんです。その意味では、公正証書遺言のほうがいい。どちらにせよ、トラブルを避けるため、遺言の内容を事前に家族に知らせておいたほうがいいですね」(曽根さん)

 このケースの場合、故人の息子である真一さんは遺留分を請求することができます。4人きょうだいなので、法定相続分は4分の1。その半分、8分の1をもらう権利はあるわけです。

「でも、きょうだいで争いたくない」と悩む真一さんに、曽根さんは話し合いを勧めました。

「すべての遺産をオープンにし、きょうだい全員で話し合う。相続人全員が納得すれば、遺言通りにしなくても構わないのです」(曽根さん)

 遺言は絶対と思われがちですが、「相続人全員の合意」さえあれば無理に従う必要はありません。遺言の最大の目的は「相続人同士の争いを避けること」だからです。

※女性セブン2013年9月26日号

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト