国内

安倍首相 消費増税の一方で法人税減税は明確な企業優先政治

 安倍晋三首相は、10月1日、会見を開き、来年4月から消費税率を8%に引き上げることを表明した。

 首相は増税の使途について、「消費税で安定した財源を確保し、社会保障を維持・強化していく。消費税収は社会保障にしか使いません」と断言した。

 聞いて呆れる。この政権が増税をしながら年金制度を改悪して国民負担を増やそうとしているわけだが、そもそも自民党は昨年の消費税増税法案の審議中から、増税のカネで「10年間で200兆円の公共事業」を大盤振る舞いする国土強靭化法案(継続審議)を提出し、安倍政権ができると早速、13兆円もの景気対策を打ち出した。

 今回も安倍首相は増税とセットで5兆円の景気対策を表明している。その時点で「すべて社会保障に使う」という言葉と矛盾しているではないか。社会保障などそっちのけで増税のカネをバラマキ財源として狙っていることは隠しようがない。

 国民に還元されないもうひとつの理由は、法人税減税だ。法人税減税の検討を表明したことに対して「法人優先ではないか」と質問が飛ぶと、安倍首相はこう答えた。

「法人対個人、そういう考え方を私は取りません。多くの個人は会社で働き、給料を得て、暮らしを立てています。企業の収益が伸びていけば雇用が増え、賃金が増えれば家計も潤う」

“個人に増税して企業には減税”というのはかつての小泉政権と同じ政策だが、その結果、企業が空前の利益を上げながら、利益分は役員報酬(小泉政権の5年間で平均2倍にアップ)と株主配当、そして内部留保に回され、サラリーマンの給料は大幅にダウンする結果を招いた。

 今回も賃下げが止まらずに小泉政権と同じ道を辿りつつあるが、それでも法人減税を進めるのには別の事情がある。

 サラリーマンの給料は上がらないのに、アベノミクスによる輸出企業の業績回復で法人税収が急増しているからだ。法人税収の伸びは安倍政権誕生(昨年12月)から今年5月までで1兆円以上にのぼる。

 このまま政府目標の名目3%成長が実現すれば、法人税を中心に税収が5兆~6兆円増え、消費増税は必要ないという試算もある。

 企業が儲かって税金を払い、国民は新たな税負担なしで社会保障財源を賄えるなら、国民も、企業もウィンウィンの関係ではないか。

 それなのに、安倍首相はせっかくの増収分を法人税減税で企業に還元し、国民には「財源がない」と消費税を押しつける。明らかな企業優先政治であり、「個人対企業という考え方はとらない」などとよくいえたものである

※週刊ポスト2013年10月18日号

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