国際情報

安楽死専門クリニック 昨年開業後患者が殺到・処置は無料

 2002年に安楽死法が施行されたオランダでは、安楽死数は2006年に約1900人だったが、2012年には約4200人までに増えている。これは同国の年間死亡者数の3%にも上る数だ。

 安楽死数が増えている背景について、オランダ政府は「理由を明確に説明できない」としているが、同国内では“安楽死専門クリニック”の活動がその一因と考えられている。

 オランダ第3の都市デン・ハーグにある「レーフェンスアインデ・クリニク(死ぬためのクリニック)」には、昨年3月のオープン後、患者が殺到している。同院では、患者とカウンセリングを重ねた後、自宅に専門ユニットを派遣して安楽死処置を行なっている。ディレクターのスティーブン・プレイター氏がいう。

「開院以来1年半で、約1100人の申請があり、そのうち、医師の判断を経て安楽死にいたったのは約200件。現在でも180人がウェイティング・リストに入っている状況です。安楽死基金の援助もあり、処置はすべて無料です」

 クリニックを訪れるのは、かかりつけ医に安楽死処置を拒まれた患者が多いという。法律で定められているのは“医師が刑事罰に問われない”ということだけで、処置は義務ではない。信条や経験の有無から処置を拒む医師も多いのだ。クリニックはまさに、死に場所を求める人々の“駆け込み寺”なのである。

 処置数が急増する背景はそれだけではない。2011年11月、重度のアルツハイマー病を患っていた64歳の女性に安楽死が行なわれたことが明らかになった。それまで、認知症が進んだ患者に「自発的な意思表示」ができるのかが疑問視されてきたため、処置は行なわれてこなかったが、初めての事例になった。女性は8年前から「老人ホームに入ったら、その際には安楽死を望む」と紙に書き残していたという。

 また、今年6月には、死に直面している新生児を見るに耐えられない親は、医師に安楽死を求めることができるようになった。同国の年間出生数約17万5000人のうち、およそ650人が、その例にあたるとされる。社会学者の立岩真也氏(立命館大学教授)はこう指摘する。

「本来は“本人の意思”が安楽死の適用条件なのに、意識の確認のできない子供、障害者、認知症患者などにも対象が拡大しています。オランダでは、年を取って生きるのが嫌になった高齢者にも認めようという動きもある。“終末期”や“耐えがたい苦痛”という条件も外れてきています」

※週刊ポスト2013年10月25日号

トピックス

裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
TikTokをはじめとしたSNSで生まれた「横揺れダンス」が流行中(TikTokより/右の写真はサンプルです)
「『外でやるな』と怒ったらマンションでドタバタ…」“横揺れダンス”ブームに小学校教員と保護者が本音《ピチピチパンツで飛び跳ねる》
NEWSポストセブン
台湾有事を巡る高市早苗首相の発言から緊張感が高まり続けている(時事通信フォト)
《台湾有事のゼロ日目は始まっているのか》米・シンクタンクが想定する3つの“開戦シナリオ” 防衛族の与党重鎮は「中国側に開戦の口実を与えてしまった」と憂慮
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
公設秘書給与ピンハネ疑惑の維新・遠藤敬首相補佐官に“新たな疑惑” 秘書の実家の飲食店で「政治資金会食」、高額な上納寄附の“ご褒美”か
週刊ポスト
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン