第三の課題は難題だった。大根おろしはそのままチューブに詰めると水分と繊維質が分離してしまい、みずみずしさが失われてしまう。そのため、詰める際に水分の量を調整する必要があるのだが、このバランスが難しい。高木は粘り強く何度も何度も試作を行ない、ついに最適な割合を発見した。
最後に残ったのは、日持ち=賞味期間の問題だった。スーパーで販売するには、賞味期間は長いほどいい。営業サイドからは、「90日は持たせて欲しい、いや150日だ」といった強いリクエストが寄せられていた。だが、高木の想いは違っていた。彼女が設定した賞味期間は「60日」。
「大根おろしは、“生きた野菜”です。それが3か月以上も長持ちすると、『添加物が入っているんじゃない?』などと、お客様に不安感を抱かせてしまう。安心感があってお店も売りやすいのが『60日』なのです」
試行錯誤の末、大根独特の苦みやにおいを和らげるレモン果汁を加えること等で、60日間みずみずしい風味を持続させることに成功した。
こうして2013年8月、史上初のチューブ入り大根おろしは、全国のスーパーの店頭に並びはじめた。秋の味覚、秋刀魚(さんま)のシーズンになんとか間に合った。
(文中敬称略)
■取材・構成/中沢雄二
※週刊ポスト2014年1月31 日号