ビジネス

ロボット掃除機が床掃除しやすいダイニングチェアの開発秘話

 フランスベッドが作る「浮く」ダイニングチェア「フローティア」が売れている。開発に至るまでの話は2年近く前に遡(さかのぼ)る。フランスベッドでソファーベッドなど機能性ベッドの開発を手掛ける商品開発本部の山田安宏は、ある日上司に、ロボット掃除機が止まらないダイニングチェアの開発をするよう告げられた。

「ロボット掃除機ってあるだろ。自分で勝手に動き回って掃除してくれるやつ。あれが掃除しやすいダイニングチェアを開発してくれないか。あっ、これは社長の指示だからね」

 面食らった山田が話を聞いてみると、どうやら社長が自宅で使っているロボット掃除機が、ダイニングテーブルの下でたびたび止まってしまうらしいのだ。原因は、ダイニングチェアの脚にぶつかってしまうことだった。

「ロボット掃除機がチェアの脚にぶつからないようにするにはどうすればいいか──すぐ頭に浮かんだのが、“宙に浮くチェア”です」

“宙に浮く”といっても、空中浮遊するわけではない。掃除の際にテーブルに引っかけて上げておくチェアだ。誰でも思いつきそうなアイデアにも思えるが、日本ではダイニングチェアは肘掛けが無いタイプが一般的なため、テーブルに引っかける仕組みを考えねばならない。

「掃除は毎日しますから、主婦でも力やコツを必要とせず、簡単に扱えるものでなくてはなりません。かといって、単純な仕組みでは他社に簡単に真似られてしまいます」

 熟考を重ねたどり着いたのは、背もたれの一部をぐるりと90度回転させる方法である。これなら力もコツもいらない。製作コストも抑えられそうだ。

 すぐに試作品の製作に取り掛かった。ネックとなったのは、背もたれを回転させる金具だった。力をいれずともスムーズに回転し、しかも定位置できっちりと止まらなければならない。テーブルに引っかけるために、チェアの自重に耐える強度も必要だ。だが強度を追求すると金具自体が大きくなり、チェア全体が重くなってしまう。主婦が毎日テーブルに上げ下げすることを考えれば、1グラムでも軽くしたい……。

 独自の金具を開発し、やっと納得がいく試作品ができたのは、2012年12月。自信満々で“発注主”ともいえる社長に見せにいった。だが返ってきたのは厳しい言葉だった。

「外から金具が見えているじゃないか。こんな美しくないものは売れないぞ!」

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
国仲涼子が『ちゅらさん』出演当時の思い出を振り返る
国仲涼子が語る“田中好子さんの思い出”と“相撲への愛” 『ちゅらさん』母娘の絆から始まった相撲部屋通い「体があたる時の音がたまらない」
週刊ポスト
「運転免許証偽造」を謳う中国系業者たちの実態とは
《料金は1枚1万円で即発送可能》中国人観光客向け「運転免許証偽造」を謳う中国系業者に接触、本物との違いが判別できない精巧な仕上がり レンタカー業者も「見破るのは困難」
週刊ポスト
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン