芸能

中村吉右衛門 歌舞伎は日本人が日本を知ることができる芸術

 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、70歳を迎える今なお、新しく開場した歌舞伎座の最前線でファンを魅了し続ける歌舞伎役者・中村吉右衛門。その原動力は何か。歌舞伎が持つ日本文化の魅力、それを次代に伝える覚悟について語る。

 * * *
 歌舞伎の演目の多くは江戸時代に書かれ、そこには庶民の感覚や、彼らが垣間見た武家の忠義や世相といったものが色濃く反映されている。言葉には出さずとも相手の心中を察する「奥ゆかしさ」や、困った時は助け合う「思いやり」など、様々な人間模様が描かれております。

 少し前まで下町の人間関係に見られた、近所の家のドアを開けて「お醤油貸してよ」という光景は多少お節介ではありますが(笑)。今のように誰とも知れないお隣さんが気付かないうちに孤独死していたということは、まずあり得なかった。

 私自身はそうした現状を都会的というよりあまりに寂しく不人情だと思います。同じように思う方は、ひと頃までは確かにあった日本的な人情を再発見するために、歌舞伎をご覧になるといいかもしれない。

 例えば東日本大震災の時に日本人が隣人愛や道徳心に溢れた国民だと海外から評されたのは、そういう部分でしょう? 義理人情に厚く、狭い島国で互いを思い合ってきた本来の日本人らしさが歌舞伎には見つけて余りあります。

 もう一つは文化の成り立ちです。かつて漢字から仮名を作ったように、日本は外国から文化を取り入れ、なおかつ十分に消化して、自前の文化に昇華させることに長けている。料理でも何でもそうです。最近はその消化と昇華の手間暇を惜しんでか、欧米風の個人主義や効率主義をそのまま鵜呑みにするような風潮もございます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ビエンチャン中高一貫校を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月19日、撮影/横田紋子)
《生徒たちと笑顔で交流》愛子さま、エレガントなセパレート風のワンピでラオスの学校を訪問 レース生地と爽やかなライトブルーで親しみやすい印象に
NEWSポストセブン
鳥取の美少女として注目され、高校時代にグラビアデビューを果たした白濱美兎
【名づけ親は地元新聞社】「全鳥取県民の妹」と呼ばれるグラドル白濱美兎 あふれ出る地元愛と東京で気づいた「県民性の違い」
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
『ルポ失踪 逃げた人間はどのような人生を送っているのか?』(星海社新書)を9月に上梓したルポライターの松本祐貴氏
『ルポ失踪』著者が明かす「失踪」に魅力を感じた理由 取材を通じて「人生をやり直そうとするエネルギーのすごさに驚かされた」と語る 辛い時は「逃げることも選択肢」と説く
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
10月に公然わいせつ罪で逮捕された草間リチャード敬太被告
《グループ脱退を発表》「Aぇ! group」草間リチャード敬太、逮捕直前に見せていた「マスク姿での奇行」 公然わいせつで略式起訴【マスク姿で周囲を徘徊】
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《巨人の魅力はなんですか?》争奪戦の前田健太にファンが直球質問、ザワつくイベント会場で明かしていた本音「給料面とか、食堂の食べ物がいいとか…」
NEWSポストセブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《梨園に誕生する元アイドルの嫁姑》三田寛子と能條愛未の関係はうまくいくか? 乃木坂46時代の経験も強み、義母に素直に甘えられるかがカギに
NEWSポストセブン
大谷翔平選手、妻・真美子さんの“デコピンコーデ”が話題に(Xより)
《大谷選手の隣で“控えめ”スマイル》真美子さん、MVP受賞の場で披露の“デコピン色ワンピ”は入手困難品…ブランドが回答「ブティックにも一般のお客様から問い合わせを頂いています」
NEWSポストセブン