芸能

中村吉右衛門 歌舞伎は日本人が日本を知ることができる芸術

 重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、70歳を迎える今なお、新しく開場した歌舞伎座の最前線でファンを魅了し続ける歌舞伎役者・中村吉右衛門。その原動力は何か。歌舞伎が持つ日本文化の魅力、それを次代に伝える覚悟について語る。

 * * *
 歌舞伎の演目の多くは江戸時代に書かれ、そこには庶民の感覚や、彼らが垣間見た武家の忠義や世相といったものが色濃く反映されている。言葉には出さずとも相手の心中を察する「奥ゆかしさ」や、困った時は助け合う「思いやり」など、様々な人間模様が描かれております。

 少し前まで下町の人間関係に見られた、近所の家のドアを開けて「お醤油貸してよ」という光景は多少お節介ではありますが(笑)。今のように誰とも知れないお隣さんが気付かないうちに孤独死していたということは、まずあり得なかった。

 私自身はそうした現状を都会的というよりあまりに寂しく不人情だと思います。同じように思う方は、ひと頃までは確かにあった日本的な人情を再発見するために、歌舞伎をご覧になるといいかもしれない。

 例えば東日本大震災の時に日本人が隣人愛や道徳心に溢れた国民だと海外から評されたのは、そういう部分でしょう? 義理人情に厚く、狭い島国で互いを思い合ってきた本来の日本人らしさが歌舞伎には見つけて余りあります。

 もう一つは文化の成り立ちです。かつて漢字から仮名を作ったように、日本は外国から文化を取り入れ、なおかつ十分に消化して、自前の文化に昇華させることに長けている。料理でも何でもそうです。最近はその消化と昇華の手間暇を惜しんでか、欧米風の個人主義や効率主義をそのまま鵜呑みにするような風潮もございます。

関連キーワード

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン