『あいつの気持ちがわかるまで』を上梓した石黒謙吾さん

【「人脈」という言葉は「モノ感」が強い】

 世の中を見ていると、人との繋がりメインで仕事をやっている人もいますけど、そういう人々の仕事の完成度自体は低いのではないでしょうか。ブローカー的といいますか……。僕が携わっている出版の世界でもですが、発注主や上司もその人の仕事には満足していないケースが多いのではと、他業種の方々と話していても感じます。

 僕は、著作以外に、書籍をプロデュースしていますが、必ず編集や構成までやって最後まですべての部分に手をかけます。そうでないとブローカーになってしまうのですね。ただ、そういった仕事をする人のビジネス的効率は良いはずですよね。数をさばけますし。

 ただ、あくまでも好き嫌いですが、僕は作るのが好きだからこの仕事をしているのであって、本の形を成立させるためではありません。プロセスの山あり谷あり自体がないと、人生の終盤に自分のやってきたことを振り返ったときに楽しくならないと思っています。
 
 そのためにも、<人脈先行>で仕事をするのは喜びが少ないように感じられます。自分で見つけたりほじくり出したり、自然な縁から始まるからこそ、自分らしさが出たものを残せると考えます。

「人脈」ということばは嫌いです。「モノ感」があるといいますか……。「人脈」と聞くと、クモの巣状にネットワークになっていて物質的なイメージが。人間をメリット/デメリットという尺度でのメディアと捉えるような。「人脈づくりが大事」とか「人脈でビジネスを」などの言葉が乱れ飛んでいますね。「知り合い」と言わず、「人脈」と言ってしまうガッツキ感が、まずは嫌ですね。

 編集者やライターなど出版の世界でも「人脈ないとダメだよ」と言う人はいます。それはまあ、あった方がいいのは間違いないですが、ないから仕事にならないかと言ったらそんなことはありえない。知り合いが全然いないかけだしだったら、編集部に電話するとか、知り合った初対面の人に、まずはやりたいこと、できそうなことを売り込みすればいいだけです。

 そんなのかけあってくれるの? って思うかもしれませんが、かけあってくれないような、それこそ人脈重視で(笑)、未知の可能性に目を向けない怠惰な人だったら、仕事しても得るものも少ないでしょうから、付き合わなくていい。それぐらいの覚悟を持っていれば自信が醸し出されることでしょう。

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