【書評】『3日もあれば海外旅行』吉田友和/光文社新書/798円
【評者】関谷淳子(トラベルナビゲーター)
著者は10年ほど前、初の海外旅行として夫婦での世界一周を実行。その過程を『世界一周デート』という本にまとめた。607日間の長旅を実行すべく会社をやめ、以来、旅行作家として活動している。
その著者は、サラリーマンをしながらでも休みのたびに海外旅行へ行く“サンデートラベラー”というライフスタイルを提唱してきた。
確かに、羽田空港の国際線乗り入れやLCC(格安航空会社)の増加、さらにスマホの普及による航空券やホテル予約・手配の平易化など、海外旅行を取り巻く環境はここ数年で大きく変化している。それでも、「3日もあれば海外旅行」なんて、よほどの旅好きでもない限り実践できないのではと、疑いたくなる。しかし本書には、時間やお金がなくても旅をあきらめないためのノウハウがびっしり詰まっているのだ。
例えば、羽田発の深夜便を使うタイ・バンコクへの旅。金曜(木曜深夜)出発で、現地に朝到着。日曜までフルに遊び、月曜早朝に帰ってくる。航空券は約6万円~。つまり3連休ならば会社を休まずに海外旅行が可能というわけだ。東南アジアをはじめ韓国、台湾、香港はもちろん、日程をプラスしてヨーロッパ、北米、ハワイも週末海外が可能という具体的な提案が記されている。
既存のパックツアーを使わずに、自分がいかに100%満足できる旅を自分で組み立てるか。そのための実践術として、航空券の予約に至便な横断型検索サイトの紹介や、成田や羽田以外の空港から出発するという裏ワザ、マイルの貯め方・使い方、ホテル予約、デジタル機器の最新活用法なども披露している。
細かく丁寧で多岐にわたる攻略法が次々と展開するが、本書は単なるノウハウ本ではない。著者は旅への動機づけの部分にもしっかりページを割き、どこへ行きたいか、何がしたいかを明確にし、それを達成し納得できる旅をしてほしいと呼びかけている。
休みが取れない(取らない?)日本人だからこそ、短くても充実感のある旅ができるはずだと著者はいう。会社勤めに限らず、主婦の皆さんも今度の3連休、ダンナ様に子供を預けて、ママ友と一緒に自分の時間を楽しむ旅行へ出かけてみてはいかがだろうか。
※女性セブン2014年3月6日号