1990年代に入るころ、バブルは弾けて泡沫と化し、日本経済は長い停滞期、学生にとっては「就職氷河期」に入る。そして、それまでの“バブリーな研修”は姿を消し、できるだけ予算を抑え、効果を最大にする研修内容が模索された。

「たとえば、駅前で自社の商品を売らせたり、製品についてのアンケートをとったりする会社が出てきた。会社にしてみれば、タダで社員に度胸をつけることもできるし、商品の知識を蓄えさせることもできる。その上、会社の営業やマーケティングにもプラスになるわけですから一石二鳥です」(前出・元橋氏)

 新入社員に会社の周囲を掃除させる企業が増えたのもこの頃だった。これも、近所からの評判が上がって企業のPR効果があった。しかも、カネがかからない。前出の根本氏が続ける。

「それまで検証されなかった研修の効果が問われるようになりました。そして、より直接仕事に役に立つような内容が増えた。とにかく、“即戦力で稼げる人材を作ろう”ということ。当然、いつ費用を回収できるかわからないような、海外での研修などは一気に鳴りを潜めました」

 新入社員研修にはカネをかけない。それを企業が徹底すると、大学のカリキュラムにまで影響が現われた。

「大学は就職氷河期のなかでも実績を残して学生を獲得するため、企業の新人研修を先取りするキャリアデザインの授業を盛んに行なうようになりました。今では大学がプロを招いてビジネスマナーや接遇対応まで教えるようになっています」(根本氏)

※週刊ポスト2014年4月18日号

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