ライフ

佐々木俊尚氏 暗記するほど読み込み自分の血肉になった本紹介

 本は人を創り、人を変え、人を育てる。時間に余裕があるゴールデンウイークに「読む本がまだ決まっていない」というあなたに、フリージャーナリストの佐々木俊尚さんが選りすぐりの3冊を紹介する。

 * * *
『二十億光年の孤独』(谷川俊太郎 著、川村和夫 翻訳、W.I.エリオット翻訳/集英社文庫)は書く仕事を目指したキッカケの詩集。作者が21才のときに綴った作品で、すでに60年あまり経過していますが、言葉のひとつひとつが鮮やかできれい。高校時代に買ったものはボロボロになってしまったので、改めて愛蔵版を買いました。もう暗記するぐらい読み込んでいるので、今や自分の血肉となっていますね。

 また、ぼくは昔から料理が好きで、最近“家めし”エッセイを出版しましたが、これは『食卓の情景』(池波正太郎/新潮文庫)のような作品を今の時代に再構築できないかという思いから。池波さんの本に登場する料理は、とてもシンプルなのに、どうしても食べたくなる。料理の表現やおいしそうな描写は、結構この本に勉強させてもらいました。

『悲しみの歌』(遠藤周作/新潮文庫)は第二次大戦中、米軍捕虜の生体解剖実験に関与した医師が、その後、町の開業医として生きるのですが、過去の行為をマスコミに追及される話です。

 今の時代、なんでも白黒つけたがる人が多いですよね。いったん「悪」と認定されると、ネット言論や報道が寄ってたかって攻め立てる。そういう空気の中で読み返してみると、一体何が正義で何が悪なのか、本当の悪なんて存在しない。みんな弱いだけだという作家のメッセージがしっくりくるというか、胸に迫るものがありますね。

 ぼくは膨大な情報量を武器に仕事をしていますが、収集した情報を、どういった視点で読み解くかが大切なんです。

 一冊の本というのは、そこに著者の世界観、価値観が込められている。

「あ、こんなふうに世界を読み解く人がいる」と、世の中の見方を知識として蓄積させていくと、自分の中に“軸”ができて、大量の情報にも溺れない。

 本は月に30~40冊は買いますが、最初の30ページでダメなら終わり。そこは割り切ってスリリングな本との出合いに常に期待しています。

※女性セブン2014年5月8・15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン