ビジネス

アニメ「聖地巡礼」で観光客激増の裏 観光庁が表彰する町も

 ゴールデンウィークには人気の行楽地へ出かける予定を組んでいる人も多いだろう。茨城県大洗町、埼玉県久喜市鷲宮、秩父市、長野県大町市、滋賀県豊郷町、鹿児島県種子島。決して知名度が高くない場所もあるが、いずれも若者を中心に訪問者が増えている。

「彼らは好きなアニメ作品のモデルとなった場所を訪れているんです。”聖地巡礼”と呼び交通の不便さも乗り越えてきます。観光には立地が重要と言われますが、彼らには必ずしも当てはまりません」と奈良県立大学講師で『n次創作観光 ―アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』著書の岡本健氏はいう。

「アニメの作中でモデルになった土地をファンが訪れるという行動は1990年代からありましたが、2000年代以降に目立って増えました。とくに女子高校生たちの日常を描く4コマ漫画を原作としたアニメ『らき☆すた』の舞台のひとつ、鷲宮神社の初詣客が2008年に激増したことで社会的にも広く知られるようになり、経済効果が10億円はくだらないという試算も出されました」

 2007年に放送されたアニメ『らき☆すた』は鷲宮町(現在の久喜市)をモデルに背景が描かれた。放送中から出典さがしをしたファンたちが町を訪れるようになり、2007年に9万人だった鷲宮神社の初詣客は2008年に30万人、2009年は42万人へと激増して話題になった。2014年も47万人の初詣客が訪れている。

「同じような形で聖地となりファンが巡礼する土地は全国で増え続けています。増加にはアニメの制作状況が変化したことも大きく影響しています。1970年~1980年代のアニメはSFものが多く、背景は宇宙や未来、架空の世界などでした。ところが2000年代以降は日常を描くものが多くなったのです。

 アニメ制作関係者によると、日常的な背景をまったくの空想で描くのはとても難しい作業なのだそうです。そのうえ、テレビアニメは3か月ごとに新作に切り替わる放送形式が一般的になりました。リアリティのある背景を効率よく描くため、実際の風景をデジカメで撮影してコンピュータで処理し背景に使用する技術を活用するようになり、“聖地”が増えているのです。

 制作されるアニメの性質の変化と同時に、ブロードバンドやスマートフォンが普及しネットユーザーが拡大したことも大きく影響しています。情報収集や交換など、背景の元ネタを探す能動的なオーディエンスとしての活動がしやすくなったのです。彼らは現地で作品のグッズが売られているだけでは満足しません。ファン同士やその土地の人とコミュニケーションがとれる魅力的な“聖地”には繰り返し訪問します」(前出・岡本さん)

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト