国内

故渡辺淳一氏 新米編集者に高級ワインふるまい男の遊び伝授

 初期の『阿寒に果つ』から『失楽園』『愛の流刑地』、そして『愛ふたたび』に至るまで男女の性愛の世界を描き続けた作家・渡辺淳一氏が、4月30日、80年の生涯を閉じた。

「命の根源はエロス」──。その探究心は、76歳で前立腺がんを患ってからも、衰えることはなかったという。生前、本誌インタビューに語っていた渡辺流【欲情の作法】を改めて振り返る。

 渡辺氏は、4月30日午後11時42分、都内の自宅で静かに息を引き取った。告別式は5月5日、五反田の桐ヶ谷斎場で近親者だけで営まれ、近日中に、お別れの会が開かれる予定だという。出版関係者がいう。

「今年に入って自宅療養を続けていたが、それでも創作意欲はまったく衰えなかった。“この年齢になって見えてきたものがある”と、次回作の構想も語っていた。亡くなる直前にも『今度は一緒にワインを飲もう』と声をかけてもらったのに残念です」

 北海道生まれの渡辺氏は札幌医科大を卒業後、講師として同大に勤務しながら小説を書き、1965年に『死化粧』で新潮同人雑誌賞を受賞。1969年に専業作家を目指して上京し、1970年『光と影』で直木賞を受賞した。1980年代からは男女の激しい性愛の世界を描き、次々にベストセラーを世に送りだした。

 闘病中ながら、昨年2月、23歳で直木賞作家となった朝井リョウ氏の授賞式に出席し、「品よく落ち着いて知的インテリになったら消える。即物的な欲望をぎらつかせて」と独特のアドバイスを送った。常々、「作家の原点は欲望」と語る渡辺氏らしい言葉だった。

 振り返ると、渡辺氏は本誌にも、人間の本質、性愛の本質を突いた珠玉の言葉をいくつも残していた。

<男も精子と同じで、そもそも振られる生き物で、振られてこそ男なんです。なのに、振られて傷つくのが嫌だというので、恋愛を避けている男が多い。自尊心やプライドが強いんだね。そういうものは恋愛の邪魔になるから、捨てた方がいい>(以下、<>内は本誌インタビューからの抜粋)

 2009年、作家の高樹のぶ子氏との対談で、こう語っていた渡辺氏。当時はちょうど、「草食系男子」という言葉が話題になり始めた頃。

 対談を担当した20代前半の若手男性編集者の顔をのぞき込み、渡辺氏は「君はもしかして、草食系男子じゃなかろうね?」と問うた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバー・斉藤慎二。9ヶ月ぶりにメディアに口を開いた
【休養前よりも太ってしまった】元ジャンポケ斉藤慎二を独占直撃「自分と関わるとマイナスになる…」「休みが長かった」など本音を吐露
NEWSポストセブン
約40年、地元で愛された店がラーメンをやめる(写真提供/イメージマート)
《SNS投稿やグルメサイトの弊害》あっという間に人気飲食店になったことを嘆く店の人たち 問い合わせが殺到した中華料理店は電話を撤去、行列ができたラーメン店は閉店を決めた 
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《TOKIO解散後の生活》国分太一「後輩と割り勘」「レシート一枚から保管」の節約志向 活動休止後も安泰の“5億円豪邸”
NEWSポストセブン
大谷翔平の新投球スタイルを分析(Getty Images)
《二刀流復活》進化する“投手・大谷翔平” 「ノーワインドアップ」と「シンカーボーラーへの移行」の新スタイルを分析
週刊ポスト
中山美穂さんをスカウトした所属事務所「ビッグアップル」創設社長の山中則男氏が思いを綴る
《中山美穂さん14歳時の「スケジュール帳」を発見》“芸能界の父”が激白 一夜にしてトップアイドルとなった「1985年の手帳」に直筆で記された家族メモ
NEWSポストセブン
結婚式は6月26日に始まり3日間行われた(時事通信フォト)
《総額72億円》Amazon創始者ジェフ・ベゾス氏の豪華結婚式、開催地ベネチア住人は「億万長者の遊び場に…」と反発も「朝食17万円、プライベートジェット100機貸し切り」で市長は歓迎
NEWSポストセブン
藤川監督(左)の直訴を金田氏(右)が存命であればどう評したか
阪神・藤川球児監督の「練習着にハーフパンツ着用」直訴で思い出される400勝投手・金田正一さんの言葉「大投手になりたければふくらはぎを冷やしたらアカン」
NEWSポストセブン
「札幌のギャグ男」公式インスタグラムより
《特別支援学級編入を決断した当事者の声》「小3の知能で止まっている」と宣告された中学1年生が抱えた“複雑な思い”「母さんを楽にしてやれるって思ったんだ」
NEWSポストセブン
STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
仲睦まじげにラブホテルへ入っていく鹿田松男・大阪府議(左)と女性
石破“側近”大阪府連幹部の府議、本会議前に“軽自動車で45分ラブホ不倫” 直撃には「知らん」「僕と違う」の一点張り
週刊ポスト
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト