芸能

森繁久彌「セリフなんて覚えてきちゃダメ」と風間杜夫に説明

 子役を経て早稲田大学第二文学部演劇専修へ入学、劇団を結成して演出家の故・つかこうへいさんと出会った俳優の風間杜夫は、主演した映画『蒲田行進曲』がヒットしたことで活躍の場所を広げていった。敵役として共演した故森繁久彌さんとの思い出を語る風間の言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる。

 * * *
 風間杜夫は主役に抜擢された1982年の映画『蒲田行進曲』の大ヒット以降、テレビや映画の主要キャストに次々と起用されていった。1983年の東映正月映画『人生劇場』もその一つで、若山富三郎や松方弘樹を相手に若いヤクザ・宮川を演じている。

 1985年の日本テレビ年末時代劇『忠臣蔵』では浅野内匠頭を演じている。この時の敵役・吉良上野介は森繁久彌だった。

「森繁さんは憧れの人でした。あの方の書かれた本のタイトルが『品格と色気と哀愁と』というんですが、それを座右の銘にしたいくらい、慕っていました。

 セットの外で森繁さんはじめ共演者の皆さんと談笑していた時、『風間君はセリフを覚えてくるのかい』と森繁さんが聞かれてきたことがありました。『いや、そんな覚えてはきませんね。大体のことは把握していますが』と答えたら『それでいいんだ』と。

『セリフなんて覚えてきちゃダメだ。相手役がどういう芝居をするのかとか、現場で感じたことが大事なんだから。なまじキチッと覚えてきて、ちょっと変更されたらできない役者はいっぱいいる。それだったら、その場で動いた方がいい』とおっしゃる。それは怠けるためじゃないんです。本当にその通りだと思って、今でもあまり覚えていかないようにしています」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。

※週刊ポスト2014年6月6日号

関連記事

トピックス

役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月20日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン