ビジネス

企業の買収防衛策廃止で「ハゲタカ再び飛来の可能性」と識者

 会社の最高意思決定機関である「株主総会」がピークを迎える。総会では取締役の選任のほか、M&A(合併や買収)など会社の存亡にかかわる重要課題も決めるため、コーポレートガバナンス(企業統治)のあり方が議案にのぼることは多い。

 ただ、今年の総会はガバナンス強化とは逆行しているかにみえる“買収防衛策の取り下げ”に踏み切り、株主にその是非を問う企業が多くなりそうだ。

 事実、6月16日に開催されたゲーム会社、カプコンの株主総会では有効期限を迎える買収防衛策を継続する議案が<否決>された。また、「日本郵船や旭化成なども防衛策を更新しない方針」(全国紙記者)だという。

 そうした企業の動きは数字にも表れている。野村証券の調べによれば、5月末までに買収防衛策を導入している企業は498社で、2008年のピーク時から約13%減った。今年に入ってからもすでに17社が防衛策を廃止した。

 元通産官僚の村上世彰氏率いる、通称・村上ファンドが阪神電鉄(現阪急阪神ホールディングス)の乗っ取り騒動で世間を騒がせたのが2005年。あれから、第三者が大規模な株式の買い付けや敵対的買収を仕掛けないよう、企業が既存株主に新株予約権を割り当てるなど「予防線を張る」のが当たり前になった。

 そうした“買収規制”が、なぜいま緩和され始めているのか。経済誌『月刊BOSS』編集長の関慎夫氏が解説する。

「日本企業は押しなべて業績が良く株価も高いので、簡単に買収されるリスクが減ってきたことが大きい。手元資金に余裕があれば、配当を増やすなどして株主を満足させる施策も取れますしね。

 もっとも、株主からすれば買収防衛策は必ずしもありがたい提案ではありません。買収されたことで企業業績が拡大し、高値で株が売れるなど結果的に株主価値の向上につながることも珍しくありませんからね。防衛策は会社を乗っ取られたくない経営陣の保身でしかない側面もあるのです」

 しかし、防衛策を緩めることで「物言う株主」の存在感が増し、海外ファンドによる日本企業の買収リスクが再び高まる危険性はないのだろうか。

 経済ジャーナリストの松崎隆司氏は、「カギをかけない家がたくさん出てきたら、空き巣が増えるのは当然」と話し、こう続ける。

「いまの企業業績は国の円安・株高政策に支えられている面が大きく、一時の安心ムードに過ぎません。依然として米欧を中心とした海外の投資ファンドが日本株を買いあさっているという話も聞きますしね。中長期的にみれば、脇の甘い日本企業のM&Aはやりやすくなると思います」

関連キーワード

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン