辰徳は入団以来、嫌なこと(球団が落合博満をFAで獲ったり、外野にコンバートされたりなど)を我慢してきた。その我慢は、常に父親に言われた通りにやってきたことで培われたのではなかったか。「赤い糸で結ばれている」と言って結婚した時くらいしか、親に歯向かうことはなかったのではないかと思う。

 2012年、原巨人が日本ハムに勝って日本一になった時、飛行機で貢と一緒になった。息子さんは立派な監督に成長しましたネと言うと、こう言っていた。

「立派になった。ただ巨人の監督としては少し不満だけどな」

 貢は、野球は戦術・戦略だけではできないという監督としての持論がある。そのことを私は相模原の飲み屋に二、三度連れて行ってもらった際に聞いた。

「高校野球の審判には自営業者、特にタクシーの運転手が多い。自由な時間が多いから。だから日頃の送り迎えを頼めばネ……、“魚心あれば水心”だよ」

 貢には、私が余分な東海大の人間関係を書いたせいでどやされたり、皆の前で叱られたりもした。しかし男気に溢れ、少し山っ気もあり、側にいて楽しい人だった。それに東海大の教え子たちには必ず教員免許を持たせ、系列校の就職に口を利くなど、面倒見の良さで慕われ、人がついてくる面があった。

 原監督にとって、尊敬し続けた厳父を失い、本当の一本立ちができるかどうか。貢の言う「大巨人の監督」になれるかが問われている。

※週刊ポスト2014年6月27日号

関連記事

トピックス

中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
愛子さま、初の単独公務は『源氏物語』の特別展 「造詣が深く鋭い質問もありドキっとしました」と担当者も驚き
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
稽古まわし姿で土俵に上がる宮城野親方(時事通信フォト)
尾車親方の“電撃退職”で“元横綱・白鵬”宮城野親方の早期復帰が浮上 稽古まわし姿で土俵に立ち続けるその心中は
週刊ポスト
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト