投資情報会社・フィスコ(担当・小瀬正毅氏)が、7月28日~8月1日のドル・円相場の見通しを解説する。
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今週のドル・円は、ウクライナ情勢や中東情勢に警戒しつつ、連邦公開市場委員会(FOMC)と米国7月の雇用統計に注目する展開となる。ウクライナの紛争が激化した場合、イラクが内戦に陥った場合、パレスチナ紛争が激化した場合は、リスク回避の円買い圧力が強まることになる。
しかしながら、日米の金融政策の乖離観測や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による外貨建て資産への投資増額期待からドルの下値は限定的と予想される。
【連邦公開市場委員会(FOMC)】(29-30日)
連邦公開市場委員会(FOMC)では、資産購入額が350億ドルから250億ドルへ、100億ドルのテーパリング(量的緩和縮小)が予想されている。米国の6月の雇用統計の改善や7月19日週の新規失業保険申請件数が2006年2月以来の28.4万件まで減少したことを受けて、声明文で出口戦略に言及されるか否かが注目ポイントとなる。
【米国7月の雇用統計】(1日)
米国の7月雇用統計の予想は、失業率は6.1%で6月と変わらず、非農業部門雇用者数は、前月比+22.5万人で、6月の+28.8万人から増加幅の減少が見込まれている。雇用情勢が大幅に改善するポジティブ・サプライズにならない限り、量的緩和第3弾の終了時期は10月頃、利上げ時期は2015年第3・四半期以降という市場予想は変わらない。
雇用情勢の大幅改善となるポジティブ・サプライズになれば、利上げ時期が2015年第2・四半期以前に前倒しされる可能性が高まることで、ドル買い要因となる。
【中東の地政学的リスク】
中東の地政学的リスクの高まりは、米国が軍事介入していないことで、「有事のドル買い」となる可能性に警戒することになる。イラクでは、アルカイダ系の武装組織「イラク・シリア・イスラム国」が樹立したイスラム国と、イラク、イラン、シリア、サウジアラビアとの緊張が高まりつつあり、ラマダン明けに向けた紛争拡大に警戒する展開となる。
パレスチナでは、イスラエルによるガザ地区への地上侵攻により、中東全域での地政学的リスクが高まりつつある。イラクが内戦に陥った場合、原油価格が上昇することで、原発稼動停止で原油輸入の依存度が高い日本経済にはマイナス要因、貿易赤字の拡大により円安要因となる。
【ウクライナ紛争】
ポロシェンコ・ウクライナ政権と親ロシア武装勢力との武力衝突が激化しつつあり、欧米とロシアの対立も緊迫の度合いを増しつつある。ウクライナ東部での紛争が激化した場合、リスク回避の円買い圧力が強まることになるが、第2次冷戦の構図からは「有事のドル買い」となる可能性にも警戒することになる。
7月28日-8月1日に発表予定の主要経済指標のポイントは次の通り。