問題は終焉の、その後だ。
「少なくともEUではもう成長戦略は採っていないし、EU圏内での通貨とエネルギーの共有を軸に次のステージを模索している。政治形態としては国民国家を超えつつ、南は北アフリカ、東はウクライナが入るかどうかくらいの経済圏で物的・人的資源の自給を図ろうとしている。つまり、従来の覇権的帝国とは違う“閉じた帝国”です。オバマ大統領が世界の警察の役割を降りると発言したアメリカもいずれは閉じた帝国をめざすでしょう。
となれば、地理的に隣接している日中韓は好き嫌いを超えて連携する他ない。このまま成長戦略と好き嫌い外交を続ければ21世紀も戦争の世紀になる。そうさせないためにも脱成長は必要です。今後三世代くらいをかけてソフト・ランディングできれば、実はこんなに面白い時代もないのです」
「芸術家が歴史の目盛りを刻む」とシュミットが言ったように、彼らの理屈以前の感覚が時代の胎動をいち早く察知する例は歴史的に多い。そうした異分野にも柔軟な目を配るエコノミストもまた、舞台上の変人ならぬ賢明な住人に違いない。
【著者プロフィール】水野和夫(みずの・かずお):1953年愛知県生まれ。早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了後、八千代証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。チーフエコノミスト等を経て、2010年退社。同年内閣府大臣官房審議官(経済財政分析担当)、2011~2012年内閣官房内閣審議官(国家戦略室担当)。2012年埼玉大学大学院で博士号(経済学)。現在日本大学国際関係学部教授。著書に『100年デフレ』『超マクロ展望 世界経済の真実』(共著)等。168cm、65kg、A型。
(構成/橋本紀子)
※週刊ポスト2014年8月29日号