むしろ、深刻さが問題になるのは別のドラマ。リアルな暴力を追い求めていく社会派。一家心中、暴力、殺人といった要素をこれでもかこれでもかと描く『家族狩り』(金曜午後10時TBS系)。
「ここまでリアルな残酷シーンばかりが続くなんて、耐えられないわ。前のクールで話題になった『MOZU Season1~百舌の叫ぶ夜~』ならば、何とか似たようなシーンでもがまんできたんだけれど。あれならフィクションとして楽しく観られました。けれど、『家族狩り』はもう無理」と60代のドラマ好き女性は言いました。
「最近ニュースで流れてくる現実の事件が、友達を殺して解剖したとか目を覆いたくなるような暴力的な内容ばかりですよね。その上に、また家族間の暴力を描く刺激的ドラマなんて見る気がしないでしょう」というのは50代の男性の感想。
作り物感満載のチープな不倫ドラマが、その娯楽性を輝かせる時代。一方で、暴力をテーマにした刺激的なドラマは、リアリティばかり追究すればかえって陰惨さが際立ってしまい、敬遠されるということでしょうか。ちなみに、『家族狩り』は映画撮影用のデジタルビデオカメラを使い、家庭の現実味を伝えるためのセットを作り、映像エフェクトとサウンドエフェクトで「臭い」まで表現しようと試みているそうです。
テレビドラマは、常に時代とともにある。その時の社会の空気、雰囲気と一体であり、その中で鑑賞されるという現実がある。夏ドラマの反響は、今の社会の「軽さ」と「深刻さ」をそっくり浮き彫りにしていそうです。