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台風前後 波の水粒子変わり黒鯛やイシモチが入れ食いになる

 今年は日本に接近及び上陸する台風が多い。台風は直径が数百~数千キロの巨大な渦巻で、風は中心へ反時計回りに吹き込む。高気圧の風が中心から外へ時計回りに吹き出すのと真逆。夏から秋に発生する台風は太平洋高気圧の西側の縁に沿って接近するため、台風進行方向右側では反時計回りに吹き込む風と時計回りに吹き出す風が重なり、湿った海からの強風が吹き込むと同時に波とウネリが太平洋沿岸部へ打ち寄せる。

 波は水粒子が深場では正円、浅場では長円を垂直方向に描いて運動している状態だが、この動きは深さが波長の半分以上になると消滅する。台風などで海が荒れたときに魚が深場へ避難するのは、激しい水粒子の動きに翻弄されないためである。波が浅場に入ると水粒子が描く円は長円になって海底と接触し、砂や泥を巻き上げて濁りを発生させ、海底に潜む小動物なども巻き上げる。

 さらに浅場に入った波は水深が波長の10分の1になると砕け、または岩に衝突してサラシを発生させる。岩に付着した稚貝、海藻、カニなども波に巻き込まれて海中を漂う。台風前後はクロダイやイシモチが入れ食いになったりする。逆に海底近くを泳ぐシロギスなどは鰓(えら)に砂が付着したり、体が波で揺られるのを嫌って沖合へ避難する。

 一般に濁りを好むのは中層を泳ぐ魚で、底生魚や表層魚には濁りを嫌うものが多い。捕食行動が視覚優先のヒラマサやブリ、カワハギやメバルなども視界が利かない濁りは苦手。砂が舞うような底濁りになるとスズキやメジナも姿を消す。濁りを好む魚は台風の影響が残った状態、濁りの苦手な魚は濁りやウネリが収まった頃がチャンスだ。底濁りはエサ取りが少なくクロダイ狙いに最適だが、なぜか毒トゲを持つゴンズイもよく釣れるから要注意!

文■高木道郎(たかぎ・みちろう):1953年生まれ。フリーライターとして、釣り雑誌や単行本などの出版に携わる。北海道から沖縄、海外へも釣行。主な著書に『防波堤釣り入門』(池田書店)、『磯釣りをはじめよう』(山海堂)、『高木道郎のウキフカセ釣り入門』(主婦と生活社)など多数。

※週刊ポスト2014年9月19・26日号

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